管理サイトの更新履歴と思いつきネタや覚書の倉庫。一応サイト分けているのに更新履歴はひとまとめというざっくり感。
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〓 Admin 〓
「あれ、十六夜先輩当番じゃないのに珍しっすね」
放課後、図書室。
顔を出すときりちゃんが目を丸くした。
悪かったなー、図書委員のクセに図書室の似合わない先輩で。
「あたしの目が届かないところでもきりちゃんが真面目にやってるか見に来た」
「なんすか、それ。十六夜先輩はともかく、中在家先輩いるのに手抜きなんてできるわけないじゃないっすか」
生意気に半目で見てくるきりちゃん。ちょっとくらい乗ってくれても良いじゃんか。
それはともかく。
今日の当番は中等部がきりちゃんと怪士丸、高等部は中在家先輩とそれから──
「比菜子、早いね。どこかで時間潰してても良かったのに」
「なんだ、雷蔵先輩と待ち合わせっすか」
きりちゃんは興味を失ったようにカウンターの奥に引っ込んだ。
勿論、雷蔵も今日の当番の一人だった。でなきゃわざわざ当番休みの日にまで図書室には来ない。
「様子見に来た。雷蔵もカウンター?」
「うん。ここで待ってる?」
「じゃ、そうする~」
あたしは荷物を適当な机に置いて、書架から重たい画集を持ってきた。普通の本なんて読んでたらお休み5秒だし、真面目に自習なんて柄じゃない。暇潰しっていったら、こういう眺めてるだけでいいのしか思い付かなかった。
「え──十六夜先輩!?」
怪士丸にまで驚かれたし。
閉館五分前。
残ってる生徒の追い出しが始まって、カウンターの辺りは貸出と返却でバタついてる。
返却棚に溜まった本を抱えて、カウンター当番じゃないほうの二人が書架の間を行ったり来たりしていた。
カウンター当番じゃないほうの二人──中在家先輩も。
「……」
「……」
あたしはペコリと会釈した。
中在家先輩は何か考えるみたいな目であたしを見下ろしてくるけど、会釈を返して重たい本の片付けに入ってしまった。
私語厳禁の当然の対応。
だけど、あれ? 何かがしっくりこない……
……
…………
………………
「……ま、いいや」
考えてもわからないならしょうがないし。
考えてる間に利用者はどんどんはけてく。あたしも何描いてるのかよくわかんない画集を閉じて、帰る準備をすることにした。
画集のある書架の辺りは、元々利用者が大していないせいでいつもろくに隙間がない。あたしが図書委員じゃなかったとしても、本を戻す位置はすぐに見つけることができた。
画集をそこに押し込んで、振り返る。
「──っ!?」
ビックリしたぁっ!!
目の前に、壁ができてた。
「……」
いや、壁じゃ、ない。
「十六夜、モソ」
中在家先輩、だ。
「この後、少し残れるか、モソ」
図書委員長の中在家先輩が閉館間際とはいえ図書室で私語なんて……!!
じゃ、なくて。
カウンターからは死角。後ろは書架。目の前には、先輩の制服──近すぎて、顔を思いきり上向かせなければ先輩の表情は見えない。
ち、近すぎる……!
「~っにか、急ぎの仕事ですかっ?」
「いや、モソ…………時間は、あるか、モソ」
いちるの望みをかけて絞り出した言葉は、速攻で否定されてしまった。
て、事は。
「……」
あたしは自分の迂闊さを呪った。
雷蔵と付き合ってますアピールをすることに気を取られ過ぎて、こないだ変なところで先輩の話をブッチした事忘れてた……!
さっきの「あれ?」はこれだったのか!!
自意識過剰の思い過ごし──なんて笑い飛ばせないのは、逃げ場のない今の状況とか、モソモソしてる中にそこはかとなく感じる色気というかなんというか……ゴニョゴニョ。
「……」
「……」
「比菜子、どこだい? そろそろ閉館するよ」
「雷蔵!」
雷蔵の声は、まさしく天の救けだった。
隣の通路を覗いてたらしい雷蔵は、あたしの声を聞いてすぐこっちに来てくれた。
「……中在家先輩?」
あたしじゃなくて中在家先輩がまず目についたらしく、雷蔵はきょとんとした声をあげる。
「雷蔵、か……モソ」
「あ、あのっ、約束があるので!」
あたしは口早に断ると、先輩の前から抜け出して雷蔵に駆け寄った。
状況を察したらしい雷蔵はあたしの肩を引き寄せて、
「慌てると危ないよ」
ニコッとあたしを安心させる笑顔をくれた。
「…………」
背中に刺さる、中在家先輩の視線。雷蔵は申し訳なさそうな上目遣いで先輩を見上げる。
「すみません、先輩。比菜子は僕と一緒に帰る約束なので」
「…………わかった、モソ」
溜め息が、落ちた。
中在家先輩の視線が剥がれて、荷物を置いてた机に戻るまで、雷蔵はあたしの肩を放さなかった。
放課後、図書室。
顔を出すときりちゃんが目を丸くした。
悪かったなー、図書委員のクセに図書室の似合わない先輩で。
「あたしの目が届かないところでもきりちゃんが真面目にやってるか見に来た」
「なんすか、それ。十六夜先輩はともかく、中在家先輩いるのに手抜きなんてできるわけないじゃないっすか」
生意気に半目で見てくるきりちゃん。ちょっとくらい乗ってくれても良いじゃんか。
それはともかく。
今日の当番は中等部がきりちゃんと怪士丸、高等部は中在家先輩とそれから──
「比菜子、早いね。どこかで時間潰してても良かったのに」
「なんだ、雷蔵先輩と待ち合わせっすか」
きりちゃんは興味を失ったようにカウンターの奥に引っ込んだ。
勿論、雷蔵も今日の当番の一人だった。でなきゃわざわざ当番休みの日にまで図書室には来ない。
「様子見に来た。雷蔵もカウンター?」
「うん。ここで待ってる?」
「じゃ、そうする~」
あたしは荷物を適当な机に置いて、書架から重たい画集を持ってきた。普通の本なんて読んでたらお休み5秒だし、真面目に自習なんて柄じゃない。暇潰しっていったら、こういう眺めてるだけでいいのしか思い付かなかった。
「え──十六夜先輩!?」
怪士丸にまで驚かれたし。
閉館五分前。
残ってる生徒の追い出しが始まって、カウンターの辺りは貸出と返却でバタついてる。
返却棚に溜まった本を抱えて、カウンター当番じゃないほうの二人が書架の間を行ったり来たりしていた。
カウンター当番じゃないほうの二人──中在家先輩も。
「……」
「……」
あたしはペコリと会釈した。
中在家先輩は何か考えるみたいな目であたしを見下ろしてくるけど、会釈を返して重たい本の片付けに入ってしまった。
私語厳禁の当然の対応。
だけど、あれ? 何かがしっくりこない……
……
…………
………………
「……ま、いいや」
考えてもわからないならしょうがないし。
考えてる間に利用者はどんどんはけてく。あたしも何描いてるのかよくわかんない画集を閉じて、帰る準備をすることにした。
画集のある書架の辺りは、元々利用者が大していないせいでいつもろくに隙間がない。あたしが図書委員じゃなかったとしても、本を戻す位置はすぐに見つけることができた。
画集をそこに押し込んで、振り返る。
「──っ!?」
ビックリしたぁっ!!
目の前に、壁ができてた。
「……」
いや、壁じゃ、ない。
「十六夜、モソ」
中在家先輩、だ。
「この後、少し残れるか、モソ」
図書委員長の中在家先輩が閉館間際とはいえ図書室で私語なんて……!!
じゃ、なくて。
カウンターからは死角。後ろは書架。目の前には、先輩の制服──近すぎて、顔を思いきり上向かせなければ先輩の表情は見えない。
ち、近すぎる……!
「~っにか、急ぎの仕事ですかっ?」
「いや、モソ…………時間は、あるか、モソ」
いちるの望みをかけて絞り出した言葉は、速攻で否定されてしまった。
て、事は。
「……」
あたしは自分の迂闊さを呪った。
雷蔵と付き合ってますアピールをすることに気を取られ過ぎて、こないだ変なところで先輩の話をブッチした事忘れてた……!
さっきの「あれ?」はこれだったのか!!
自意識過剰の思い過ごし──なんて笑い飛ばせないのは、逃げ場のない今の状況とか、モソモソしてる中にそこはかとなく感じる色気というかなんというか……ゴニョゴニョ。
「……」
「……」
「比菜子、どこだい? そろそろ閉館するよ」
「雷蔵!」
雷蔵の声は、まさしく天の救けだった。
隣の通路を覗いてたらしい雷蔵は、あたしの声を聞いてすぐこっちに来てくれた。
「……中在家先輩?」
あたしじゃなくて中在家先輩がまず目についたらしく、雷蔵はきょとんとした声をあげる。
「雷蔵、か……モソ」
「あ、あのっ、約束があるので!」
あたしは口早に断ると、先輩の前から抜け出して雷蔵に駆け寄った。
状況を察したらしい雷蔵はあたしの肩を引き寄せて、
「慌てると危ないよ」
ニコッとあたしを安心させる笑顔をくれた。
「…………」
背中に刺さる、中在家先輩の視線。雷蔵は申し訳なさそうな上目遣いで先輩を見上げる。
「すみません、先輩。比菜子は僕と一緒に帰る約束なので」
「…………わかった、モソ」
溜め息が、落ちた。
中在家先輩の視線が剥がれて、荷物を置いてた机に戻るまで、雷蔵はあたしの肩を放さなかった。
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