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「一応聞くが、お前は何をしたいんだ?」
 あたしが話し終わって、口を開いたのはやっぱり三郎だった。

「何をって、言われますと?」
「比菜子ちゃんの話聞いてると、僕の出る幕じゃない気がするんだけど……」
 むむ、雷蔵まで!

「いやむしろ雷蔵でしょ?! 他選択肢ないでしょ!」
「えぇっ?! どこら辺が?!」
「まぁ、私か雷蔵と付き合っているのが明白になれば先輩への言い訳も立つものなぁ」
 三郎はグラスの縁を徒に弾きながら唇を歪めた。
 わかってるなら、わざわざ聞き返さないでほしい。

「それで中在家先輩は姉小路に譲る気か。いいご身分だな」
「……やっぱ感じ悪いよね──ごめん、忘れて」
 全部話した後で冷笑で指摘されて。あたしはずぶずぶクッションと一緒に床へ沈み込んだ。これしかない! ってさっきまであんなに盛り上がってた気分が、一気にぷしゅーっと抜けてしまったみたいだった。

 だから。

「うーん……そういうことなら、僕は別にかまわないよ」
「え?」
 咄嗟に、なんて言われたのかわからなかった。

 今の話の流れなら、雷蔵にも諭されたっておかしくないのに。
「比菜子ちゃんが本気で中在家先輩とは付き合いたくないっていうなら防波堤ぐらいにはなるし、それに
(──そのくらいで簡単に諦めるみたいな生半な気持ちで、ウチの比菜子にちょっかい出してほしくないなって)」

 それに、で雷蔵は口を噤んだ。続きが気になる。けど知らない方がいい気もする。
 三郎は苦笑して肩を竦めた。
「相変わらずこいつに甘いな、雷蔵」
「三郎だって。僕が言わなかったら同じこと言ったよね」
「さぁな。兎も角、これであの先輩がどう出てくるか──楽しみだ」

 そしてあたしは、先輩の「話」を聞かなくていい免罪符を手に入れたのだった。

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