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 簡単な事前説明を受けてから誘導に従って着いた席は、ちょうどスクリーンの真正面だった。

「しかし、わざわざ危険な場所に連れて行くのか」
 シートに腰を下ろしたヘンゼルは、まず聞かされたシチュエーションにぼやく。

「お話お話」
「そのうち実際にありそうな話ではあるけどね」
「いかれてる」
「怖いのかよ」
「そういう問題じゃない!」

「挑発しないの。っほら、ベルト締めて」
 理彩は溜息を吐いてピエトロの席のシートベルトに手を伸ばした。
「自分でできる!」

「はしゃぐなよお子様」
「ヘンゼルも!」
 鼻で笑うヘンゼルの足を、茅紗はぎゅむっと踏みつけた。

 幸い、キャストのベルトチェックが始まったためそれ以上の言い合いには発展せずに済んだ。


 実際に上映が始まってしまうと、気に喰わない同行者の事は忘れてしまったように、ピエトロもヘンゼルもこのバーチャルな演出を楽しみだした。目を輝かせている彼らを横目に、理彩や茅紗は安堵の息を吐く。

 勿論、彼らの現在置かれている環境の技術と比べたらチープなものだ。けれどだからこそ「お遊び」として見ることができたようだ。

「うわっ⁈」
「きゃあっ⁈」
 観客から歓声半分の悲鳴が上がったのは、上映の後半だった。

 搭乗機が故障して着水するシーン。座席の振動とともに一部の席に水が噴きかかったせいだ。真正面の席にいた四人もこの水の洗礼を受けた組となった。

「結構来たわー」
「うわってまた色気ないひめ……」
 からかうように言いかけたピエトロが、理彩を振り返った途端にやにや笑いを固まらせて口を噤んだ。
「え、何?」
 理彩は眼鏡の水滴をハンカチで拭いながら首を傾げる。
「……出るぞ」
 ピエトロは彼女の眼鏡を取り上げると、代わりに自分のジャケットを脱いで理彩に押し付けた。

「わ、なに? って!」
「とりあえず、出よ?」
 戸惑う理彩を茅紗が促して、四人はアトラクションを後にする。

「そろそろ眼鏡返してほしいんだけど」
「着ろよ! 持ってないで」
「理彩さんっ、透けてるから!」
 より明るい場所に出て事態を把握したのは茅紗だ。彼女にこっそり耳打ちされて、理彩は慌てて自分を見下ろした。

「うわ……」
 白いブラウスを着ていたのが問題だった。しかも四人の中でも一番多く水を被ったのは理彩だったようで、濡れて張り付いた布の下からはくっきりと下着の線が見て取れる。

「トロ臭いんだよ、おらっ」
 理彩が動くよりも早く、業を煮やしたピエトロは押し付けたジャケットを取り上げて彼女に被せた。頭からすっぽり覆い隠されたそれは、ほとんど連行される容疑者のよう。
「っ苦しいんだけど!」
 数秒おいて、理彩はもぞもぞ顔を出して文句を言った。
「モタモタしてるのが悪い」
「それと眼鏡!」
「仕事じゃないんだから必要ないだろ?」
「いる。見えない」
「そんなに目、悪いのかよ?」
「言っとくけどピエトロの顔もぼやけてるから、いま」
「この距離でか? 酷いな」
「ド近眼なのは今更だから返して」
 半眼で睨みあげる理彩。ピエトロは楽し気に唇の端を上げて彼女を覗き込み、
「返してやれよ、大人げない」
若干苛立たし気なヘンゼルの声が彼の行動を止めた。

「──ほらよ」
 ぞんざいな手つきで、ピエトロは理彩に眼鏡を突っ返す。
「……有難う」
「早いとこ乾かした方がいいな」
 ヘンゼルは肩を竦めた。

「そうだ、じゃ、これなんてどう?」
 その横からマップを提示したのは茅紗だった。

「天気良いし、程よく風に当たれば乾くの早いよ」

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「水が変な感じだ」
「水底の造詣が見えちゃうと夢がなくなるっていうしね」
「まあ、コンクリートの打ちっぱなしじゃ確かに興醒めだよな」
「でも反射して光がゴンドラや石橋でゆらゆらしてるのは綺麗だよね。これはごまかしじゃない演出」
 理彩が目を細めると、ピエトロはじっと彼女を見下ろした。
「……」
「何?」
「いや、似合わねぇなって思っただけ」
「余計なお世話」

「あ、順番来たよ! 四名です」
 不穏な気配を察したのか、茅紗は声をあげて二人を促した。
「慌てて転ぶなよ」
「平気でーす!」
 ヘンゼルの注意を彼女は軽く受け流す。
「おら、足元気をつけろよ」
「──大丈夫なのに」
 一方理彩は、当たり前のように段差で持ち上げられて、顔を赤くした。

 子供みたいに、と取るかイチャラブなエスコートと取るかは受け取り方次第。どうやら後者と受け取ったらしいキャストは、
「良いですねぇ、カレシさん。皆さんもカノジョさんが落ちないようにちゃーんと支えてあげてくださいね♪」
朗らかな笑顔で周囲のカップルの沈黙を生んだ。


「割と面白かったな」
「パークの雰囲気掴めたしね」
 ゴンドラを降りるときにも持ち運びされた理彩は少し膨れていて、ピエトロに相槌を打ったのは茅紗の方だった。
 ヘンゼルは指をわきわきと動かしながら、のほほんと会話している彼女とピエトロとを見比べている。
 茅紗はさっさと船着き場に降りてしまったのだが、自分もエスコートできるところを見せたかったのかもしれない。
 微妙なヘンゼルの視線に気づかず、ピエトロと茅紗は話を続ける。

「あの時何考えてた?」
「あの時?」
「願いが叶う橋って奴。単なる子供だましなのはわかってるけどさ」
「ああ」
 茅紗は苦笑した。少し照れの混じる仕草に、ヘンゼルは手を止めて彼女の回答を待つ。
「ゴンドラのお兄さん達の音痴が少しでも良くなりますように」
「「は?!」」
 想像の斜め下を行くコメントは青年達を異口同音に叫ばせた。

「何願おうか考える前に、あの音程に全部持ってかれたから」
「インパクトあるよね、多分敢えてなんだろうなーってはわかってるんだけど。私も他考えられなかったかな」
 理彩までがそう同調するので、話を振ったピエトロは「ちょっと待てよ!」と手を泳がせた。
「普通こういう時はあるだろ、もうちょっと、こう! なぁ?!」

「もうちょっと?」
「どうせあれでしょ。ヘンゼルはグレーテルの無事とかグレーテルとの再会とかそういう系」
「え? あ、あぁ」
「ピエトロはワンダと来れますようにとか? スタークさんにお願いすれば一日貸切の慰労会とかもできそうな気がするけど」
「彼奴に頭下げるなんて御免だからな!!」
「二人ともシスコンだよねぇ」
 茅紗は理彩とニヤニヤ笑う。ピエトロは憤然とマップを広げた。

「やめだやめ! 次! どこ行く?!」
「あの山みたいなところ気になるよね、やっぱ」
「山? えーと、じゃあセンターオブジアースかな。人気だからファストパスとる方良いかも」
「ファストパス?」
「行けばわかるよ」
 首を傾げるヘンゼルの背中を押して、四人は次のエリアに向かった。


 茅紗の読み通り、入場口付近に表示された待ち時間は120分とあり、一行はファストパスを取得することにした。
 開園から然程経った気はしないのに、ファストパスによる入場時間は既に16時台となっていた。

「じゃあ、次如何する?」
「何が良いかな?」
「……」
 邪魔にならないよう通路端でマップを眺めていると、ピエトロがある一点に目を留めた。理彩がその視線の先を辿ると、
「ストームライダー?」
マップの文字を読んだのは茅紗だ。

「ヘリキャリアとか戦闘機にも乗ってるのに、これ?」
「別に良いだろ。こういうのは男のロマンなんだよ!」
「緊迫した状況で乗るのと娯楽で乗るのは別なんじゃない?」
「ダメだとは言ってないんだけど。退屈じゃないのかなって──ヘンゼルさんもそれでいい?」
「別にかまわない。それと、ヘンゼル、でいい」
「ん、わかった」
「おいあんた!」
「なんだ?」
「連れが先行ってるぞ」
「ちっあの女っ!」
 ヘンゼルは大股で茅紗の後を追った。

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 カチューシャ達のサービス仕様なのか、四人がゲートに近付いてから周囲の時間が動き始めた。
 子連れ、カップル、友人同士の大小のグループ等々たくさんの人達で賑わっている。漏れ聞こえる話によると「今」は平日で、ハロウィンイベントが開催中らしい。言われて見ると、ゲート周りの飾りつけもどことなくかぼちゃっぽい。

「ハロウィンてのは随分一般的なイベントなんだな」
「日本のは半ば独自文化みたいなもんだけどねぇ」
 感心したように言うヘンゼルに茅紗が相槌を打つと、
「あんたハロウィンも知らなかったのかよ」
と小馬鹿にしたようにピエトロ。
 茅紗はは呑気に頷いた。
「もともとグリム童話位の時代だったからねぇ」

「あ、そのヘンゼルとグレーテルでいいんだ?」
「あの後ウィッチハンターとして逞しく成長しました☆というのがこのヘンゼルの生い立ちだから」
「ヒトを大昔の奴みたいに言うな」
「大昔じゃん。おっさんより年寄り」
「ピエトロ!」
「世界とか越えちゃうと、その辺は気にしたら負けって気がするけどね」
「確かにね。レイチェルが幾つとかソーの事とか考えてたらきりがないし」
 茅紗のフォローに理彩が同意すると、ピエトロは待ってくれよ、と手を上げる。

「俺が悪者扱い? ひどくね?」
「気にしたピエトロの負けってことだね」
 理彩はサクッと返した。
 ピエトロはガクリ項垂れる。

「気を落とさないで! そもそも今のこの状況が何でもアリで混沌としてるだけなんだから」
 と慰めるのは茅紗。
「だよな」
「茅紗、列が進んだぞ」
 ヘンゼルはむすっとして彼女を促した。

 理彩は二人の遣り取りを微笑ましげに眼を細めながら同様に足を進めた。


「じゃ、まずはどうする?」
「どういうのが人気なんだ?」
「ちょっと待って」
「えーとね」
 手荷物検査とチケットチェックを経て中に入った四人。ピエトロの質問に理彩と茅紗はそれぞれゲートで渡されたガイドマップを広げた。

「そういえば私シーは初めてかも」
「私も一回来ただけだし、もうすっかり記憶掠んじゃってるな」
「アークスシップじゃ毎日がアトラクションみたいな気がする」
「そんなことはないよ。リアルサバイバルゲームなところがあるだけだよ!」
「そっちのが酷くないか」
 茅紗の言い様に呆れたツッコミを入れるピエトロ。眉を寄せたヘンゼルが、
「ったく。ん?」
横から覗き込んだマップの一角に目を留めた。

「え?」
「これなんだ?」
「ヴェネツィアンゴンドラ?」
「ヴェネツィア……水の都か」
「ヴェネツィアのゴンドラを模したまったり観光気分アトラクションだよ」
「行くとこ決まってないし、取り敢えずこれ行ってみる?」
「並んでる間に次の所考えようか」
「ま、いいんじゃないの」
 特に異論も出なかったので、四人はまずこのゴンドラに揺られてみることにした。

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 主にヒロイン達の環境説明の自家中毒的なパート。


「おっさん……? いや、違うか」
「多分、ヘンゼルさんって人、かな」
 理彩は携帯画面を見つめながらそう応じた。

 登録されている名前はごく僅か。
 その中で彼に当てはまりそうな名前はひとつしかない。おとぎ話を思い出させるような──

 相手側の女性と目が合ったので笑いかけると、ピエトロが舌打ちした。
「なにニヘラってしてんだよ」
「秘技、愛想笑い?」
「秘技でもなんでもないだろそれ! ったく何なんだ、アイツ」
「レイチェルのパートナーさんよりそっくりな人がいるなんて驚いちゃった」
「おっさんがありふれた顔してるだけだろ」
 不機嫌の理由は、相手の容姿によるもののようだ。

「「じゃあ、閉園時間になったら迎えを寄越すから、それまでごゆっくり~!」」
 そして二人が小声で言い合っている間に、黒耳カチューシャの二人は勝手に姿を消していた。

「あっ!」

「ちっ! あの力さえ使えりゃ!」
 ピエトロは忌々しげに顔を歪めた。

 ここに連れてこられたときから、どういうわけか強化能力を一切使えなくなっていた。
 ふざけたことを抜かすカチューシャを捕まえようとしたときにそれは発覚し、にやにや笑いのカチューシャは勝ち誇ったように制限事項を告げた。イベント参加中は一般人レベルの身体能力に引き下げられていること。更にこの場所は戦闘行為禁止区域であること。でなければ、最速の男がこう易々と遅れをとる筈はない。

「別に速すぎたわけでもなかったのにね」
「るせぇよ」

「もう、こうなったらとことん楽しむしかない感じ?」
「お前相変わらず変なとこで肝が据わってるな」
「だって向こうが何かやらかすつもりならとっくにしてるだろうし、何か仕掛けられたとしてもどのみち太刀打ちできないの明白だし?」
「……確かにな」
 理彩が肩を竦めると、ピエトロは眉間に大袈裟なほどの皺を寄せて息を吐いた。
 それから彼は、いつの間にか勝手に握らされていたチケットと携帯をぎょろりと睨みつける。

「Dか……どうせならワンダと来たかったな」
「こんなメガネザルで済みませんね」
「そこまで言ってないだろ!」
「今更言っても仕方ないし。その内ワンダを連れてく為の予習とでも思えば良いじゃない」
「そういう事にしといてやるか。はぐれんなよ。あんたに何かあったとしておっさんにどやされるのは俺なんだからな」
「それはこっちの台詞。初めてなんでしょ? あんまりきょろきょろしてると迷子になるからね」
「ガキ扱いするな!」

「ぷ、だっせ」
「ヘンゼル!」
 二人の遣り取りを眺めていたもう一組だったが、男性の方が失笑し女性に足を踏まれて叱られた。
 今度はそれを揶揄しようとするピエトロを、理彩が肘でつついて黙らせる。

「ごめんなさい、連れが失礼を」
「気にしないでください。えっと、崇光茅紗さん?」
「ですです。そちらは崇光理彩さんですよね? 近親者以外で同姓の人って初めてです」
「名前も似てますしね」

「お連れの方はピエトロさんで良いですか? マキシモフ姉弟の」
「知ってるんですか?」
「あれ? 理彩さんっててっきり私と同じ境遇だと思ってたんですけど」

「同じ境遇?」

「今みたいに、別の世界から飛ばされた。アヴェンジャーズの世界か、マキシモフ姉弟と一緒にまた違う世界、かな? 理彩さんの場合は」
「アヴェンジャーズの世界って……もしかして、あの世界もフィクションとして紹介されていた?」
「少なくとも私の世界では。「も」ってことは、アヴェンジャーズ知らなかったけど何か知ってる他の要素が?」
「PSO2っていうオンラインゲームのPCっぽい人が何度か」

「え?! まさかクリフォード?!」

「レイチェルっていうブレイバー/テクターのヒューマン。Ship1に所属してるって」
「私達がいたところってアークスシップのShip4なんだけど──多分、パラレルワールドだろうなぁ。如何にもPCって役回りなのはうちではクリフォードっていうガンナー/フォースのデューマンだから」

「じゃあ、彼は?」

「ヘンゼル&グレーテルっていうアクションホラー映画の主人公っぽい人・アヴェンジャーズのホークアイさんと同じ役者さんだから、似てるでしょ?」
「おなじ、役者……じゃあ、もしかしてレイチェルのパートナーも?」

「パートナー?」

「確かにあまり現実的じゃない名前だと思ったけど。LA市警のSWAT経験者で」
「!! ギャンブルちゃん?! ウソ、Ship1にギャンブルちゃんいるの?!」
 理彩の説明を聞き終える前に、茅紗は目を輝かせて喰いついてきた。
 その後頭部をヘンゼルが携帯でゴツンと押さえつける。

「それで、中に入るのか?」
「何だ、怖気づいたのか?」
「誰が」
「ならさっさと行こうぜ。女ってのは放っとくといつまでも話し続けるからな」
 ピエトロは片手で理彩の口を塞ぎながら顎をしゃくった。

 強制的に会話を中断させられた女性陣だが、本筋は彼らに理がある。
「後で聞かせて!」
 茅紗はこそっと理彩に囁くと、抵抗はせず大人しく歩き出した。

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具体的にアトラクションを回るところを想像したらあまり面白くならなそうなのでやめた、異常に冷静なヒロイン達

*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*

 転送ゲートを抜けた先は、見慣れたショップエリアではなく、カジノエリアにも似た雰囲気のある遊興施設を見下ろすホールだった。
 薄暗く、左右背後の壁の位置は不明。だだっ広い空間とだけわかる。
 レイチェルとブライアンは顔を見合わせ、同時に装備の確認に手を動かす──
「冗談だろ?」
 呟いたのはブライアン。レイチェルも眉を顰め、装備パレットやサブパレットを急ぎ見直していく。
「……戦闘禁止区域のようです。装備が解除され、テクニックやスキルの使用も制限されています。アイテムパックそのものは参照できますが、出し入れはできない。ともすればチャレンジミッションの時の誓約とも似ていますが……」
「おかしいのはそこだけじゃない。どこだよここ」
 ブライアンは眼下の遊興施設を複雑な顔で見下ろした。
「おっめでとうございまーす!!」
「「──?!」」
「あわわわ、戦闘行為は禁止ですよー? ワタクシ一介のガイドですからね? 攻撃しても後味悪いだけですからねっ」
「おめでとう、とはどういうことですか?」
「アークスさんは冷静ですね☆Dリゾート二泊三日の旅に当選したってのに」
「Dリゾート二泊三日?」
「はい、ご当選おめでとうございます♪」
「人違いだろ」
「いえいえ」
「応募した覚えはない」
「特定の状況下にある方々を対象にした自動抽選ですから☆
 あ、ちなみに宿泊費お食事代弊社負担、連絡用端末貸し出しの至れり尽くせりですので」
「胡散臭ぇ」
「その代り、器物損壊・面倒事防止のために装備や攻撃スキルに制限を掛けさせていただいてマス」
「拒否権は?」
「ゴザイマセン」
「は?! 違法だろ?!」
「その分含めての至れり尽くせりですから。帰還の際は出発時点または経過通り、はたまたその中間の任意点、お好みの時間軸にお戻りいただけまっす」
「……Dリゾート?」
「D社の作ったキャラクターもののアミューズメントパークだろ。つまり──地球?」
「解説有難うございます!! 世界線としましては、お二方の滞在したことのある地球とはまた別ですけど、まぁ関係ありませんよね☆」
「違うってのはわかるぜ。俺が知ってるD社のパークとは見た目から別物だからな」
「それは国の違いですよぅ。お客様方の過去の滞在地は主にUSA、今回のリゾートはJAPANの物ですから」
「JAPAN? あー、他の国にもいくつかあるんだったか。それか」
「ご納得いただけたところで、連絡用端末支給しますね~」
 ぽんっと出てきた携帯には、見知らぬ名前が登録されている。
「……これは?」
「おっと失礼! もう一組のゲストの方々ですよっ」
 自称ガイドが言うや否や、二人の近くに三人の姿が現れた。
 このホールに来てから、レイチェルはなんとなく感じ取っていた気配の主達のようだ。一人はガイドを自称する青年(年齢性別不詳の容姿、出で立ちをしていたが、レイチェルは青年と判断した。勿論なんとなく)と同じような格好。とすると、残る二人がテストと言うことになるのだろう。
 一見は青年と少年。少年と見える方は履いているブーツの影響もあるだろうが、ブライアンと変わらないくらいの背丈で中性的な容姿の女性。青年はそれよりやや背が高く、がっしりとした体格の美丈夫だった。
「……初めまして。栂瀬梓です。こちらはベルクート。故郷の風習により、彼には姓はありません」
 中性的な女性はレイチェルと目が合うと、ごく冷静にそう言って会釈してきた。
「レイチェル・ラドクリフです。どうかレイチェルと。こちらはB.ギャンブル」
 応じるレイチェルもごく淡々と自己紹介を始めたので、ガイド達に加えてブライアンまで大爆笑してしまった。

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プロフィール
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真田霞
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