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図書委員(女子)の話4
2014 / 05 / 05 ( Mon )
 あたしの体調を能勢くん達がスゴく心配するもんだから、あたしは途中まで中在家先輩に送ってもらうことになった。

 気まずいんだけど、まさか後輩に送ってもらうわけにはいかないし、選択肢なかっただけなんだからね!
 並んで黙々と歩くあたし達は奇妙だったに違いない。通りかかった善法寺先輩が目を丸くしてなにか言いかけて──盛大にこけたり、中在家先輩に声をかけようとしたらしい食満先輩が、笑顔で息を吸い込んだ所で固まって言葉をなくしたり。
 空気を読まずに突進してきたのは、七松小平太体育委員会委員長(三郎:「何で委員会の肩書-w」)位だった。

「お、なんだなんだ、長次今帰りかぁ?」
「小平太、モソ」
「おぉう? 二人きりで下校って事ぁ、ついに仕留めたか!! やったな!!」
「しと……?」

「な、七松先輩! いきなり進路を逸れるのはやめてください!」
 七松先輩の勢いに呑まれてると、息を切らせた平までやって来た。

「お? すまんすまん。長次を見かけたからついな」
「それに声が大きいです!! あと、「仕留めた」じゃなくて「射止めた」じゃないんですか」
「うん? そうとも言うな。ははは、細かいことは気にするな!」
「全くもう!」
 すみません、としおらしく平に頭を下げさせるのは、さすが七松先輩なんだけど。

「しっかし良かったな、長次! 長かったもんな!」
「だから先輩、声が大きいですって!」
「目出度い事なんだから別にいーじゃないか!」

「小平太、ダマレ」
「なんだ長次、照れるな照れるな」
 七松先輩はバシバシ中在家の肩を叩いた。それで初めて、平はあたしに目を止めた。

「あれ、十六夜先輩……?」

「知ってるのか、滝夜叉丸」
「え、ええ。図書室で何度か。ですが──」
「そっか~滝夜叉丸は頭良さそうな場所好きだもんなー」
「おかしな言い回しはやめてください!」
「事実じゃないか」
 七松先輩はけろりと言う。

「私の事は今は良いんです!! 十六夜先輩ですよ」
「そうそう、十六夜比菜子ちゃん! それがどうかしたか?」
「不破先輩か鉢屋先輩とお付き合いされてるのではなかったでしょうか?」
「それは単なる噂だろう。誤解が解けたから二人は付き合う事になったんだろ?」

「ダマレ、と言っている、モソ」
 七松先輩は全く訳が解んない。平の話は確かに単なるガセネタだけど。
 中在家先輩は少しだけ大きな声で言った。
「十六夜は体調がすぐれないモソ。余計な話を聞かせるな、モソ」
「──!」
 あたしを七松先輩から隠すように、中在家先輩は片手を広げた。ヤバい、オトコマエだ。

「体調悪いのか?」
 多分七松先輩は首を傾げた。
 中在家先輩が動いたからあたしには見えない。

「んじゃ引き留めて悪かったな」
「そうですよ、七松先輩! 中在家先輩、出過ぎたことを申し上げて済みませんでした。十六夜先輩もお大事に」
「こら滝夜叉丸そんなに慌てて戻らなくても良いだろう!! 十六夜、長次は良い奴だからな!!」

「小平太」

「わ、怒るなよ、本当の事だろう!!」
「七松先輩! もう! 行きますよ!!」
 体育委員の二人は賑やかに離れていった。騒がしい声が聞こえなくなるまで待ってから、やっと中在家先輩は腕を下ろした。あたしはその間することもなくて、ぼーっと先輩の広い背中を眺めていた。

 何の事かわかりませんって、七松先輩に声かけられた時点で離れておけば良かったのかも。
 そうすれば七松先輩と平のおかしな会話を聞くこともなくて、オトコマエな中在家先輩を再認識することもなくて、それから。

「十六夜」

 振り返った中在家先輩は静かな顔をしていた。
「こんな形で知られるのは本意ではないモソ。が、誤魔化すつもりは毛頭ないモソ。
 他に想う相手が無いならば考えてみてほしいモソ。私は──」

「ああっ!!」
 あたしは大声でその先を遮った。

 沙彩ちゃんがいる。

 偶然、だろうけど校舎の方から歩いてくる、ところで。

 その先は聞いちゃいけないと思った。だから、

「すみません先輩! 帰りに家に寄るって約束してたんです!!」
空気が読めてないふりをして、勢いよく頭を下げた。誰と、なんて言わなくても察してくれるって前提での逃亡だった。

 先輩は、あたしを引き止めたりはしなかった。
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