管理サイトの更新履歴と思いつきネタや覚書の倉庫。一応サイト分けているのに更新履歴はひとまとめというざっくり感。
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今日の昼の事だ。
クラスの女の子達とワイワイしゃべくりながらご飯を食べてた。
その時、どんな流れでそんな話になったのかは解らない。あたしは食後にオレンジジュースを買って戻ってきたところだったから。
「え、えっと……中在家先輩って、優しくて素敵だなぁって……」
恥ずかしげに顔を俯かせてか細い声で言ったのは、沙彩ちゃん──大人しくて、華奢で、守ってあげたくなる系女子。誰が好きとか嫌いとか、先輩カッコイイとか仲良くなりたい、とか。そんな話に混じってる事なんてあたしが知る限りこれまで一度だってなかった。
「え、中在家先輩?」
ビミョーに顔を歪めるのは、図書室でうるさくしたりして先輩に怒られたことがあるような子達。それ以外の子は、沙彩ちゃんが初めて話題に乗ってくれたことに喜んで、
「た、確かに物静かな所なんて沙彩ちゃんと気が合いそうだよねっ」
「頼り甲斐はスゴくありそうな存在感だしね!」
とかなんとかてきとーなことを言ってる。
「そ、そんなんじゃなくて、ね?」
顔を赤くした沙彩ちゃん。助けを求めるようにあたしを見てくるから、
「ほらほら、はしゃぎすぎて困らせない。ちよ子次の授業、当たるんじゃなかったっけ?」
わざとガタガタ音をたてて椅子を引きながら、視線を散らした。
「そりゃ、あんたは良いよね~、身内にあんなカッコイイのが二人もいるし」
ブーブー言われるのはいつもの事。やつらだって別に本気じゃないの解ってるから。
「羨ましいだろ」
「ちくしょー、羨ましいっどっちか寄越せ!!」
「素直でよろしい。だが断る」
いつものじゃれ合いで解散した。ホッとした沙彩ちゃんがまだ赤い顔のままで小さく「あの、ありがとう」って離れてったのが、いつもと違ったところ。
ホントにスキ、なんだろうな、なんて考えたら、少しだけモヤっとした。
「十六夜、何かあったのか?」
放課後の図書準備室。
あたしは図書委員の当番で、破損図書の修繕をしていた。間が悪いって言うのかな、当番四人で役割分担したときに、今日の相方が図書委員長──つまり、件の中在家長次先輩になっちゃったのは、さ。
いつもは意識なんてしてないのに、赤い顔した沙彩ちゃん思い出したら、先輩の事が、姿勢のよさとか爪が切り揃えられた指先とかちょっとした仕草だとかが、気になって仕方なかった。罪悪感──だと思うんだよね。大人しくて引っ込み思案なあの子のスキナヒトと二人きりでいるってことに。
それで気が散って、ついつい手が止まって。
先輩に思いきり心配そうな顔をされてしまった。
「な、何でもナイですよ? ただ最近破損図書多いなーって気になって」
「……無理をするな」
先輩は作業の手を止めて、少し迷うようにしてからあたしの頭を撫でた。
安心を誘うような大きな手。あぁ、沙彩ちゃんはこういうところが好きなのかな。
「十六夜」
慣れないと聞き取れないようなモソモソした低い声。でも、その時の言葉ははっきりと聞き取れた。
「雷蔵と、何かあったのか?」
「え?」
「……気のせいならば、それで良い、モソ」
「…………」
視線が合っていたのは、ほんの数秒だったと思う。いつものモソモソに戻ると同時に、先輩は目を伏せた。
なのにあたしは、その先輩の両目に、縫い止められてしまったみたいに動けなくなった。
何で、今日に限って。
いつもならそんなネタを振ってくるヒトじゃないのに。
そんな真剣な目で、そんなこと──
「……十六夜先輩?」
気が付くと委員会の時間は終わってた。
中等部の能勢くんが不思議そうな顔であたしを呼んで、はっと手元を見ると、修繕するはずだった本は全部綺麗に片付けられていた。
クラスの女の子達とワイワイしゃべくりながらご飯を食べてた。
その時、どんな流れでそんな話になったのかは解らない。あたしは食後にオレンジジュースを買って戻ってきたところだったから。
「え、えっと……中在家先輩って、優しくて素敵だなぁって……」
恥ずかしげに顔を俯かせてか細い声で言ったのは、沙彩ちゃん──大人しくて、華奢で、守ってあげたくなる系女子。誰が好きとか嫌いとか、先輩カッコイイとか仲良くなりたい、とか。そんな話に混じってる事なんてあたしが知る限りこれまで一度だってなかった。
「え、中在家先輩?」
ビミョーに顔を歪めるのは、図書室でうるさくしたりして先輩に怒られたことがあるような子達。それ以外の子は、沙彩ちゃんが初めて話題に乗ってくれたことに喜んで、
「た、確かに物静かな所なんて沙彩ちゃんと気が合いそうだよねっ」
「頼り甲斐はスゴくありそうな存在感だしね!」
とかなんとかてきとーなことを言ってる。
「そ、そんなんじゃなくて、ね?」
顔を赤くした沙彩ちゃん。助けを求めるようにあたしを見てくるから、
「ほらほら、はしゃぎすぎて困らせない。ちよ子次の授業、当たるんじゃなかったっけ?」
わざとガタガタ音をたてて椅子を引きながら、視線を散らした。
「そりゃ、あんたは良いよね~、身内にあんなカッコイイのが二人もいるし」
ブーブー言われるのはいつもの事。やつらだって別に本気じゃないの解ってるから。
「羨ましいだろ」
「ちくしょー、羨ましいっどっちか寄越せ!!」
「素直でよろしい。だが断る」
いつものじゃれ合いで解散した。ホッとした沙彩ちゃんがまだ赤い顔のままで小さく「あの、ありがとう」って離れてったのが、いつもと違ったところ。
ホントにスキ、なんだろうな、なんて考えたら、少しだけモヤっとした。
「十六夜、何かあったのか?」
放課後の図書準備室。
あたしは図書委員の当番で、破損図書の修繕をしていた。間が悪いって言うのかな、当番四人で役割分担したときに、今日の相方が図書委員長──つまり、件の中在家長次先輩になっちゃったのは、さ。
いつもは意識なんてしてないのに、赤い顔した沙彩ちゃん思い出したら、先輩の事が、姿勢のよさとか爪が切り揃えられた指先とかちょっとした仕草だとかが、気になって仕方なかった。罪悪感──だと思うんだよね。大人しくて引っ込み思案なあの子のスキナヒトと二人きりでいるってことに。
それで気が散って、ついつい手が止まって。
先輩に思いきり心配そうな顔をされてしまった。
「な、何でもナイですよ? ただ最近破損図書多いなーって気になって」
「……無理をするな」
先輩は作業の手を止めて、少し迷うようにしてからあたしの頭を撫でた。
安心を誘うような大きな手。あぁ、沙彩ちゃんはこういうところが好きなのかな。
「十六夜」
慣れないと聞き取れないようなモソモソした低い声。でも、その時の言葉ははっきりと聞き取れた。
「雷蔵と、何かあったのか?」
「え?」
「……気のせいならば、それで良い、モソ」
「…………」
視線が合っていたのは、ほんの数秒だったと思う。いつものモソモソに戻ると同時に、先輩は目を伏せた。
なのにあたしは、その先輩の両目に、縫い止められてしまったみたいに動けなくなった。
何で、今日に限って。
いつもならそんなネタを振ってくるヒトじゃないのに。
そんな真剣な目で、そんなこと──
「……十六夜先輩?」
気が付くと委員会の時間は終わってた。
中等部の能勢くんが不思議そうな顔であたしを呼んで、はっと手元を見ると、修繕するはずだった本は全部綺麗に片付けられていた。
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