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 私はまた子供の姿に戻っていた。

 今度の場所は、旧街道沿いの鄙びた宿場町。湖こそ近くにあるけれど、潮の香りは遠い、内陸部だった。

 字幕が宣言した通り、そこは長閑なところだった。
 町の顔役はどこかのフィンガーフート氏みたいな身勝手ではなかったし、駐在武官が一人しかいなくても、町はきちんと機能していた。
 正式な学校はなく、穏やかそうな退役軍人の先生が開く私塾に私も通った。そこで召喚術の素養を見出だされ、顔役であるブロンクスのおじ様からも召喚術について学ぶようになったのが身体年齢十二、三歳くらいのこと。
 それから一年と少しで、機属性の才能はないからと紹介状と共に金の派閥本部に送り出された。

 田舎の子供である私には知らされていなかったことだけど、その少し前に、召喚師の失踪事件があったり傀儡戦争という悪魔との戦争があったりで、本部のある聖王国辺りでは召喚師の数が少なくなっていた。
 世襲が基本の召喚師の家系でも、跡取りの心配が出ているようで、私みたいな素質のある子供が派閥に集められたのには養子縁組という狙いもあったようだ。

 私は──けれど、相性のアンバランスさが興味を引いたらしく、議長直々の指導を受けることになった。
 美人でスパルタな議長様は多分、私が宿してるペルソナや紋章にも気付いていたと思う。だってファミィ様だもの

 ファミィ議長の下で修行を積んで、二、三年はファナンに隠った。
 修行を始めた見習い召喚師が修了前に派閥から遠出を認められるのも珍しいことだけど、四年目に里帰りを認められた。
 ファミィ様の仕事が立て込んだのが建前。派閥内部のゴタゴタから遠ざけてくれたのだとは、親しくなったミニス嬢から聞いた。

 それにしても、このタイミングでそんなゴタゴタが起きたのは誰かの恣意的なものに思えてならない。

 里帰りしたその夜、トレイユの近郊に流れ星が墜ちた。
 竜の子と響界種を巡る事件の始まりだった。


 私塾の後輩だったり、ブロンクス家の兄弟が深く関わっている事件に私が巻き込まれない筈もなく、私はファナンへ戻る機会を失ってしまった。
 コーラルは可愛くて良い子だ。

 行き掛かり上家じゃなくて面影亭で寝起きすることになった私は、宿代稼ぎも兼ねて、ちょくちょくシャオメイのお店を利用した。兼ねてるのは勿論、私のレベル調整だ。
 このシャオメイの店で取得したアイテムは、その後の世界でも重宝するものが多かった。

 ユニット召喚は霊属性しかできないでいた私が、鬼属性のユニットも召喚できるようになったのは、無限回廊で疑似鬼界の魔力を体感できたお陰だと思う。機属性や獣属性の召喚スキルも多少は上がったけれど、多分私につけられた能力特性オプションなんだろうな、そっちのユニットは一向に召喚できそうな気配はなかった。

 魔法剣士特性を選んだとき、私は一部の属性に制限を掛けることで別の属性の成長上限を緩める事を選択した。
 世界により設定されている属性が違うので、どの属性が制限されたのかは世界に出てみてからじゃなきゃわからない。例えば、火の紋章や雷の紋章が低威力でしか発揮できないのに、流水や旋風の紋章なら高威力で応用まで効いたのもそのオプションのお陰。
 召喚属性としては、霊属性特化は早い段階でわかってた事だけど、一番制限を受けてるのは……獣属性。気付いたのもやっぱり無限回廊の中でだった。



 私の歪な魔力バランスは、トレイユ組はともかく、御使い達からは警戒対象だったみたいだ。

 最初に遭遇したデコ天使──もとい、リビエルは相性がいいのかジャックフロストが見えてるみたいで、変なものを憑けた私が主の側に居ることを物凄い勢いで拒絶した。
 そんなこと言われても……ジャックはコーラルの遊び相手でもあるし(コーラルに見えてても不思議には思わなかったんだよな、何故か)キャンキャン騒ぎ立てる金切り声はコーラルのお気に召さなかったらしく、鬱陶しがられてリビエルは落ち込んだりますます私を憎んでくれたりした。
 取り成してくれたのはルシアンだ。後は群島名物のおまんじゅうを振る舞ったりしてどうにか懐柔した

 セイロンは……どうだろうな。表向きあまり露骨な警戒反応は見せなかったけど、かなり長い間観察する視線を感じた。アルバとシンゲンが仲間になった辺りで漸くかな、視線から冷感がなくなったのは。

 アロエリはリビエルと似たり寄ったりだった。
 流石にジャックまでは見えてなかったようだけど、本能的に異質な魔力を感じ取って、でもそれがなにかよくわからなくて、苛々したらしい。リビエルとセイロンからの情報だ。
 アロエリに関しては何がどうして緩和されたのかよくわかんないんだけど……フェアを認めたから、フェアが太鼓判押してくれた私のことも一応は容認してくれたってところかな。

 それにしても、こうまで警戒されるんじゃ、魔力を抑える事を身に付けなきゃいけないだろうな。
 そう思い立ったことも、リィンバウムに来たからこそだ。

 群島では、ジャックの存在を覆い隠すように流水の紋章を宿した。
 おまけで旋風の紋章がついてきて、瞬きの紋章は趣味だ。
 紋章師じゃない私に紋章を付け替える力はないから、これからずっと、この三つの紋章と共に生きてくことになるんだろう。
 つまり──今度はジャックだけじゃなくこの紋章についても、うまく誤魔化す方法を探さなきゃいけないわけで。もっと上位の力とか言ってたら、逆に悪目立ちしてしまう。
 殲滅者アシュタル? 聖鎧竜スヴェルグ? そんなん常駐させてたら余計警戒されるわ

 気のコントロール、ということで、その辺りはセイロン、シンゲンのシルターン組が力になってくれた。
 お礼にはやっぱりおまんじゅうを所望された。やったねカトル! 群島のおまんじゅうは世界を越える評価だよ!

 後半になると、巡りの大樹自由騎士団創成メンバーであるルヴァイドやイオスも参戦してきたので、すっかり大所帯になった。
 あれ、こんな展開だったっけ? とか思わないでもなかったけど、本人達が良いと言うのだから大丈夫なんだろう。
 魔力を抑える訓練も落ち着いてきたことだし、人数が増えたことで見直すことになった襲撃警戒班の当番ローテでは、前衛改め召喚師枠で組み込んでもらうことにした。

 出来上がった当番表を皆に見せたら、いつの間にかユキヤ=見習い召喚師の称号は皆から忘れ去られていたらしく、ブロンクス兄弟にまで「あれ」なんて顔をされた。
 確かに、標準装備が片手剣で鋼の軍団と物理で渡り合ったりもしてたけど、私、君達のお父さんの口利きで金の派閥に行ってたんだけどなぁ?
 

 そして同じ頃に、もう一つの転機があった。

 それは、ギアンの仕掛けてきた、マナ枯らしという病。生粋のリィンバウムの人間にだけは抗体がないという、ご都合主義的な病気
 トリップ時リィンバウムの存在ということになってる私の場合はどうなるかと思ったけれど、影響はなにもはなかった。マナ枯らしに苦しむ仲間達の介護や、不安がる若年召喚獣組を宥めて、解決策捜しに奔走する双子や成年召喚獣組をサポートするのが私の仕事になった。
 双子には御守りのブレスレットがあったから、それで発症を免れたんだって思われてた。私には傍目なんの根拠もなくて、そりゃあ警戒して外には出さないようにするのも道理だった。

 本当は、試してみたいことがあった。

 けど失敗すると余計に苦しめることになるから実験台になってとも言えず、とばっちりを受けた赤き手袋の暗殺者でも町外れに転がっていたら、拾ってきて実験台になって貰おうかと考えていた。召喚術やリィンバウムの術では逆効果、なら、紋章術では──?
 問題が解決した後でシャオメイに訊ねてみたら、やっぱり、回復するか悪化するか五分五分の確率だったろうって言われた。仲間で試さなくてよかった。

 だから窮地を救ったのは、定石通り、双子の祈りがもたらした慈雨。
 快癒の後で、ギアンから双子の素性──響界種であることを突き付けられ、仲間達の間には何とも言えないぎこちなくぎすぎすした空気が漂った。
 その空気を和らげたがったのか、これまで敢えてスルーしてたものが飽和してしまったのか、私は「じゃあ何でお前は平気だったんだよ!?」と仲間達から総突っ込みを貰った。

 私はものすごく大雑把に、私の置かれている境遇を明かした。
 元々召喚とか名もなき世界とかの概念がある世界だ。私がその名もなき世界のどこかから不思議な力で生まれ直した(?)存在だとしても、そのせいで距離を置かれたり疑われたりすることはなかった。むしろ、そんな事かとがっかりされた。ちょっと理不尽。
 まぁそれはそれとして。

 それぞれの不安だとか葛藤を乗り越え、結束はむしろ強くなった。

 諸々あって(狂血の呪いを掛けられたカサスに母なる海使ったら、思いがけず凶暴化が収まった。ちび共にむちゃ感謝された)和解したエニシア派ご一行を交えての最終決戦──フェアとエニシアの涙ながらの訴えとか、ライの激情を乗せた拳とかで見事ギアンを改心させることに成功した。
 助っ人に現れた超律者がライフェア同様の双子だったことには驚いたけれど、とにかく大団円。

 これで漸く家に帰れる──とは思わなかった。群島諸国での十年余りとリィンバウムでのこの十数年。経験した物事は、現代日本での「普通の生活」に帰ることへの自信を喪失させていたから。
 いや、まぁ、家に帰ることに自信も何もないんだけどさ? 

『ハッピーエンドを迎えた後、帰還を希望された方には元の世界・元の時間にお帰りいただけます』

 それが字幕の告げる条件だった。

 だとすれば、今望めば家に帰れる?

 この血に塗れてしまった私が?

 それよりもコーラル達の成長を見守ってリィンバウムに留まる方が幸せじゃないだろうか──


 そんな風に迷っている間に、視界が暗転した。

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 私はまたTVの前にいた。

『TIME UP』


 画面に表示されていたのはそんな文字。

「はァ?」


『時間切れのようです』

「いや、だからなんで」

『送られた世界でどのようにお過ごしいただくかは、お任せいたしております。
 ですが、一定期間成果が見込めない場合には新しい世界を提供させていただきます

「成果って……大団円じゃない!」
『確かに。
 阪上様のご存知のゲームとしては大団円のようにお見受けします』

「じゃあ何で」
ゲームの大団円はコントローラを握りながら、モニタ越しにご堪能ください
 同じ世界でお過ごしいただく以上、ご自身のフラグを見落とされませんようご注意願います』
「は?」


『それでは、次は長めに猶予をお取りできる世界へお送りしましょう』
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