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そこに至るまでの七夜5
2014 / 05 / 17 ( Sat )
 一人で泣いていた私は幼子で、たまたま通りかかった医者に拾われて養子となった。

 その世界ではあらゆる住民がデータベースに登録されていて、登録されていない人間は裏社会の中でも更に忌避される「人でなし」扱いだった。
 私は拾い主が変わり者の医者だったおかげで、年齢は若干細工されているものの、一般人としてデータベースに登録されることになった。
 私は毒殺された失敗を教訓に、普通の読み書きを学ぶ傍ら薬品に関する研究に没頭した。
 学校には通わなかった。

 年端もいかない子供がやることではなかったけれど、普通でない育ての親は、私の好きなように学ばせてくれた。その普通でない育ての親が医療系ハンターだと知ったのは、拾われてからゆうに十年は過ぎてからの事だった。
 まだ成長期とはいえ身体もだいぶ出来上がり、薬物に関する研究もだいぶ進んだ頃、彼は私にハンター試験の受験を勧めてきた。
 研究分野は裏世界から狙われるような危険な物──自身の身を守るためにも、今後の研究費用を確保するためにも、プロハンターになっておいて悪いことはない、と。

 私は勧め通りハンター試験を受験し、これまでの世界の経験を活かし一発合格を決め、うっかりと幻影旅団の誰かさんと知己を得てしまった。
 試験中のくじで一時期パートナーになってしまったんだからどうしようもない。

 ライセンス取得後その足で家にとって帰り、育ての親に念の師匠になるよう頼み込んだ。
 念を起すところまでは比較的簡単だったけれど、それをきちんとしたものにするまでにはなんと一年半も掛かった。成長速度鈍化のデメリットがこんなところで幅を利かせたらしい。
 開花した念の系統は操作系──私は最初に、自分の身体能力を向上させるための発を作り出した。
 制約や誓約についてはおいとくとして、その能力は「セルフオーバーコントロール」念の発動媒体は、BASARA者らしく天花六花にしておいた。

 シャルナークを始めとする幻影旅団からは度々狙われるようになっていたけれど、彼らが欲しがったのが単なる研究成果ではなくて研究者そのものだったおかげで、私の命は無事だった。
 過去の拷問史で登場した毒の調査だとか、盗み出した骨董品に含まれていた未知の毒物の解析だとか、ただ調べるだけの内容であれば多少は協力した。フィンクスがその未知の毒にうっかり侵されてしまったしまったときはもう……うん。流石に助けないわけにもいかないかと思って旅団のアジトの一つに大人しくついて行ったよ。
 そんなことを続けているうちにゾルディックからも声がかかるようになった。
 ちゃんと表の医療向きの製薬とか薬効の発表とかだってしてるのにだよ? お得意様が賞金首だらけっていうのは医者の養子としても医療系ハンターとしてもいただけない。

 あぁ、そういう連中ばかりじゃなくて、研究材料採取中にかの有名なジン・フリークスにも会った。
 あれはまだハンター試験受験前だったか後だったか。弟子が秘境の毒虫に噛まれたからって連れられて行った密林では、カイトが片手の指では足りない多種多様の毒物に当たって半死半生になっていた。毒虫に噛まれ、刺され、毒蛇に噛まれ、傷口から毒花の花粉が入り込み、更には毒草の汁が溶け込んでしまった水を口に含んでしまったらしい。あれは別の意味で苦労した。
 立ち直った後カイトがジンの弟子を辞めず、ハンター試験に合格してプロハンターになったのはある種の奇跡のように感じたよ。

 マフィアやらゾルディック家やらその他の暗殺稼業の連中やら、そうじゃなくても面倒な客だらけで疲れ果てる私に、クロロは「最初から旅団の専属になってしまえばよかったんだ」等とのたまった。絶対面白がっていた。

 この世界でのゲームオーバーも、やっぱりこの面倒なお客さん達がきっかけだった。
 彼ら同士の抗争に巻き込まれて、とばっちりでウヴォーギンの大声を浴びた。
 慌てていた私は周りに注意しないまま抗争圏から離れるためにセルフオーバーコントロールを発動してしまい──驚いた顔をしていたから、向こうに害意はなかったんだと思う。もしかしたら、私が動けないと思って、逃がすために操作媒体を打ち込んできたのかもしれない。

 でも。

 連続稼働時間10分が、この発の制約。

 発動中に他からの操作を受けた時には操作も記憶の読み取りもできないような肉塊となるのが、この発の誓約。

 私は彼らの目の前で、肉の塊になった。


 ほんの一瞬の出来事だった。
続きを読む『随分と無茶な能力設定ですね』

「……あ、マヨナカTV」
 あまりにもあっという間だったので文字を視認してからやっと現在地を自覚した。

 肉塊になった直後なのに服は汚れておらず、ウヴォーギンに吹き飛ばされかけた鼓膜も無事だった。
 ただ、全身はひどく震えていた。

『失礼いたしました。
 阪上様の成長特性上、スピード感の強すぎる世界だったようです』

「いや……流石に自分でも無謀な誓約だと思った」
 掠れる声で応じて、目を閉じる。

 瞼に焼き付いた彼の顔が忘れられそうにない。


 目を瞑っていたままだったから、次の世界について字幕がどんなコメントをしたのか、わからなかった。
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