管理サイトの更新履歴と思いつきネタや覚書の倉庫。一応サイト分けているのに更新履歴はひとまとめというざっくり感。
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〓 Admin 〓
「うわ、機械兵士だ」
カッコいいなぁ、とユキヤは硬質のボディを見詰めた。
金の派閥本部一階にある談話室。個別訓練までの時間潰しに訪れたそこに彼は控えていた。
確実に聞こえているだろうに反応らしい反応を返さないのは、待機モードに入っているのか、はたまた主以外の音声に反応しない仕様になっているのか。
しかし、この派閥に厄介になって暫く経つが、こんな見事な機械兵士を見るのは初めてだ。機属性と言えばトレイユのブロンクス家も該当するので、本部の機属性召喚師と敢えて絡むこともなかったが、それにしても、だ。
──誰の護衛獣なんだろう?
見ているだけでかなりハイレベルに鍛えられているのがわかる。ただし最初の師が機属性だったからこそ言える、最新型とは言い難いフォルムのボディ──だからこそなお魅力的。
ユキヤは時間が来るまで飽きることなく機械兵士を観察し続けた。
「──では、失礼しますね」
師であるファミィの執務室に着くと、ノックの前に人の気配がしたのでユキヤは扉の前から離れた。
カチャリ、扉を開けて現れたのは年の頃なら二十代半ば。召喚師が好んで纏うローブよりは若干丈の短いオフホワイトのマント、モスグリーンの衣服を身に付けた黒髪の女性だった。隠されているので詳細は不明だが、マントの下には軽装ではあるが鎧を着用し、背には穂先のない槍──と言うより棍を背負っている。足元は頑丈そうな白いブーツ。あまり召喚師らしくはない。
「……」
「……」
ペコリ、互いに会釈だけしてすれ違う。
殺伐した気配は特になく、フル装備のままの面会が許される友好関係にある相手なのだろう、と納得することにした。
ユキヤ自身は一見無手である。
「失礼します。ファミィ様、お迎えに上がりました」
「あらあらあら、もうそんな時間なのね」
ファミィはおっとり首をかしげた。
執務に追われる彼女は、訓練室で待っていても待ち惚けさせることになるからと毎回ユキヤを呼びに越させる。その度にかなりの確率で重要人物と遭遇するのだから、時間のことは方便なのかもしれない。
「今しがた擦れ違った女性は初めてお見掛けしますが……」
「チヒロさんね」
こうして訊けば、全てではないにせよ答えてくれるし、タイミングによっては紹介してくれる。勿論、相手が無色の派閥の乱や傀儡戦争の関係者だ等ということは明かされたことはないのだが、名を告げられればそうと悟れる知識の土台はユキヤの側にある。
けれど今回の女性は解らなかった。
「チヒロ様、ですか」
よくわからない相手には様をつけるに限る。出奔したどこかの王子とか龍人のふりをした竜神だとか、本当の身分を知っている事がうっかりばれないようにするためにも、この統一方針は有効だ。
「フフ、そうね。今回はあなたにとってはチヒロ「様」が良いかもしれないわね。あの子は巡りの大樹自由騎士団の創設メンバーなのよ」
「巡りの大樹自由騎士団!? です、か」
「ええ。そうそう、ユキヤちゃんはレオルドには会ったかしら?」
「レオ……ルド……?」
ユキヤは演技ではなく声を途切れさせた。
巡りの大樹自由騎士団と言えば、それこそ傀儡戦争の関係者や無色の派閥の乱の関係者──中でも元は各国の有力騎士である面々を中核にした、国境に縛られない新しい騎士団。
レオルドと言えば、傀儡戦争の影の功労者たる超律者の護衛獣(かもしれない)の名前。先程談話室で見かけた機械兵士と同じ機体の──同じ、機体の。
「あの、名前の響き的にはロレイラルの機械兵士っぽいんですけど……どちら様の事ですか?」
「ユキヤちゃんの想像どおりよ。チヒロさんの護衛獣だから、あの子を見ればチヒロさんがどのくらいの腕なのか解りやすいと思ったのだけど」
ファミィは頬に手をあてがい、おっとり小首を傾げた。
ユキヤは全身にぶわっと興奮の波が広がるのを感じた。
──レオルドだった!
傀儡戦争を戦い抜いた猛者なのだ、相応なレベルに鍛えられているのも当然。
と、いうことは、デフォルト名とは違っていたが、先程擦れ違った女性はクレスメントの末裔──超律者なのだろうか。
──巡りの大樹自由騎士団に関わっているのは、ルヴァイドエンドかシャムロックエンドか、どっちなんだろう。
ユキヤは上擦った声で答える。
「見慣れない機械兵士なら談話室で見掛けました!! 凄くレベル高くてブロンクスのおじ様の所でも見たことないタイプだったので気になってたんです!」
「あらあら、ユキヤちゃんたらはしゃいじゃって」
「だって私霊属性以外ユニット召喚できませんし!」
「それなのよねぇ。わたくしが見る限りユキヤちゃんには全属性の素養がありそうなのに、不思議ねぇ」
ちらり、ファミィの目はユキヤの頭上に向けられた。
──ヒホ? オイラに何かご用かホー?
興味津々なペルソナがファミィの動きに合わせて首を傾げる。
この規格外の師匠の場合、見えていそうで何だか怖い。
「と、とにかくあれだけ素敵な機械兵士を護衛獣にしてられるなら、チヒロ様が優れた召喚師で巡りの大樹自由騎士団の重鎮というのも納得です!」
ユキヤはファミィの視線を背後の雪だるまから逸らすように言葉を紡いだ。
「私も早く護衛獣を召喚できるような安定した召喚技術を身に着けたいです! そろそろご指導よろしくお願いします!!」
カッコいいなぁ、とユキヤは硬質のボディを見詰めた。
金の派閥本部一階にある談話室。個別訓練までの時間潰しに訪れたそこに彼は控えていた。
確実に聞こえているだろうに反応らしい反応を返さないのは、待機モードに入っているのか、はたまた主以外の音声に反応しない仕様になっているのか。
しかし、この派閥に厄介になって暫く経つが、こんな見事な機械兵士を見るのは初めてだ。機属性と言えばトレイユのブロンクス家も該当するので、本部の機属性召喚師と敢えて絡むこともなかったが、それにしても、だ。
──誰の護衛獣なんだろう?
見ているだけでかなりハイレベルに鍛えられているのがわかる。ただし最初の師が機属性だったからこそ言える、最新型とは言い難いフォルムのボディ──だからこそなお魅力的。
ユキヤは時間が来るまで飽きることなく機械兵士を観察し続けた。
「──では、失礼しますね」
師であるファミィの執務室に着くと、ノックの前に人の気配がしたのでユキヤは扉の前から離れた。
カチャリ、扉を開けて現れたのは年の頃なら二十代半ば。召喚師が好んで纏うローブよりは若干丈の短いオフホワイトのマント、モスグリーンの衣服を身に付けた黒髪の女性だった。隠されているので詳細は不明だが、マントの下には軽装ではあるが鎧を着用し、背には穂先のない槍──と言うより棍を背負っている。足元は頑丈そうな白いブーツ。あまり召喚師らしくはない。
「……」
「……」
ペコリ、互いに会釈だけしてすれ違う。
殺伐した気配は特になく、フル装備のままの面会が許される友好関係にある相手なのだろう、と納得することにした。
ユキヤ自身は一見無手である。
「失礼します。ファミィ様、お迎えに上がりました」
「あらあらあら、もうそんな時間なのね」
ファミィはおっとり首をかしげた。
執務に追われる彼女は、訓練室で待っていても待ち惚けさせることになるからと毎回ユキヤを呼びに越させる。その度にかなりの確率で重要人物と遭遇するのだから、時間のことは方便なのかもしれない。
「今しがた擦れ違った女性は初めてお見掛けしますが……」
「チヒロさんね」
こうして訊けば、全てではないにせよ答えてくれるし、タイミングによっては紹介してくれる。勿論、相手が無色の派閥の乱や傀儡戦争の関係者だ等ということは明かされたことはないのだが、名を告げられればそうと悟れる知識の土台はユキヤの側にある。
けれど今回の女性は解らなかった。
「チヒロ様、ですか」
よくわからない相手には様をつけるに限る。出奔したどこかの王子とか龍人のふりをした竜神だとか、本当の身分を知っている事がうっかりばれないようにするためにも、この統一方針は有効だ。
「フフ、そうね。今回はあなたにとってはチヒロ「様」が良いかもしれないわね。あの子は巡りの大樹自由騎士団の創設メンバーなのよ」
「巡りの大樹自由騎士団!? です、か」
「ええ。そうそう、ユキヤちゃんはレオルドには会ったかしら?」
「レオ……ルド……?」
ユキヤは演技ではなく声を途切れさせた。
巡りの大樹自由騎士団と言えば、それこそ傀儡戦争の関係者や無色の派閥の乱の関係者──中でも元は各国の有力騎士である面々を中核にした、国境に縛られない新しい騎士団。
レオルドと言えば、傀儡戦争の影の功労者たる超律者の護衛獣(かもしれない)の名前。先程談話室で見かけた機械兵士と同じ機体の──同じ、機体の。
「あの、名前の響き的にはロレイラルの機械兵士っぽいんですけど……どちら様の事ですか?」
「ユキヤちゃんの想像どおりよ。チヒロさんの護衛獣だから、あの子を見ればチヒロさんがどのくらいの腕なのか解りやすいと思ったのだけど」
ファミィは頬に手をあてがい、おっとり小首を傾げた。
ユキヤは全身にぶわっと興奮の波が広がるのを感じた。
──レオルドだった!
傀儡戦争を戦い抜いた猛者なのだ、相応なレベルに鍛えられているのも当然。
と、いうことは、デフォルト名とは違っていたが、先程擦れ違った女性はクレスメントの末裔──超律者なのだろうか。
──巡りの大樹自由騎士団に関わっているのは、ルヴァイドエンドかシャムロックエンドか、どっちなんだろう。
ユキヤは上擦った声で答える。
「見慣れない機械兵士なら談話室で見掛けました!! 凄くレベル高くてブロンクスのおじ様の所でも見たことないタイプだったので気になってたんです!」
「あらあら、ユキヤちゃんたらはしゃいじゃって」
「だって私霊属性以外ユニット召喚できませんし!」
「それなのよねぇ。わたくしが見る限りユキヤちゃんには全属性の素養がありそうなのに、不思議ねぇ」
ちらり、ファミィの目はユキヤの頭上に向けられた。
──ヒホ? オイラに何かご用かホー?
興味津々なペルソナがファミィの動きに合わせて首を傾げる。
この規格外の師匠の場合、見えていそうで何だか怖い。
「と、とにかくあれだけ素敵な機械兵士を護衛獣にしてられるなら、チヒロ様が優れた召喚師で巡りの大樹自由騎士団の重鎮というのも納得です!」
ユキヤはファミィの視線を背後の雪だるまから逸らすように言葉を紡いだ。
「私も早く護衛獣を召喚できるような安定した召喚技術を身に着けたいです! そろそろご指導よろしくお願いします!!」
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