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 カチューシャ達のサービス仕様なのか、四人がゲートに近付いてから周囲の時間が動き始めた。
 子連れ、カップル、友人同士の大小のグループ等々たくさんの人達で賑わっている。漏れ聞こえる話によると「今」は平日で、ハロウィンイベントが開催中らしい。言われて見ると、ゲート周りの飾りつけもどことなくかぼちゃっぽい。

「ハロウィンてのは随分一般的なイベントなんだな」
「日本のは半ば独自文化みたいなもんだけどねぇ」
 感心したように言うヘンゼルに茅紗が相槌を打つと、
「あんたハロウィンも知らなかったのかよ」
と小馬鹿にしたようにピエトロ。
 茅紗はは呑気に頷いた。
「もともとグリム童話位の時代だったからねぇ」

「あ、そのヘンゼルとグレーテルでいいんだ?」
「あの後ウィッチハンターとして逞しく成長しました☆というのがこのヘンゼルの生い立ちだから」
「ヒトを大昔の奴みたいに言うな」
「大昔じゃん。おっさんより年寄り」
「ピエトロ!」
「世界とか越えちゃうと、その辺は気にしたら負けって気がするけどね」
「確かにね。レイチェルが幾つとかソーの事とか考えてたらきりがないし」
 茅紗のフォローに理彩が同意すると、ピエトロは待ってくれよ、と手を上げる。

「俺が悪者扱い? ひどくね?」
「気にしたピエトロの負けってことだね」
 理彩はサクッと返した。
 ピエトロはガクリ項垂れる。

「気を落とさないで! そもそも今のこの状況が何でもアリで混沌としてるだけなんだから」
 と慰めるのは茅紗。
「だよな」
「茅紗、列が進んだぞ」
 ヘンゼルはむすっとして彼女を促した。

 理彩は二人の遣り取りを微笑ましげに眼を細めながら同様に足を進めた。


「じゃ、まずはどうする?」
「どういうのが人気なんだ?」
「ちょっと待って」
「えーとね」
 手荷物検査とチケットチェックを経て中に入った四人。ピエトロの質問に理彩と茅紗はそれぞれゲートで渡されたガイドマップを広げた。

「そういえば私シーは初めてかも」
「私も一回来ただけだし、もうすっかり記憶掠んじゃってるな」
「アークスシップじゃ毎日がアトラクションみたいな気がする」
「そんなことはないよ。リアルサバイバルゲームなところがあるだけだよ!」
「そっちのが酷くないか」
 茅紗の言い様に呆れたツッコミを入れるピエトロ。眉を寄せたヘンゼルが、
「ったく。ん?」
横から覗き込んだマップの一角に目を留めた。

「え?」
「これなんだ?」
「ヴェネツィアンゴンドラ?」
「ヴェネツィア……水の都か」
「ヴェネツィアのゴンドラを模したまったり観光気分アトラクションだよ」
「行くとこ決まってないし、取り敢えずこれ行ってみる?」
「並んでる間に次の所考えようか」
「ま、いいんじゃないの」
 特に異論も出なかったので、四人はまずこのゴンドラに揺られてみることにした。

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