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 気が付いたのは森の中だった。
 目線がずいぶん低くて、また幼児化したのが解る。バサラの時と同じくらい、かな?
 マルクトの軍服はブカブカだと身動きが取りにくいので、鞄の中からTシャツを引っ張り出してそれに着替えた。
 人里離れているようで、円で確かめても離れたところに二人、三人位しか人の気配はなかった。
 兎に角情報収集しなければ始まらない──私は気配を殺して人のいる方へと移動した。

 気配は殺気を伴っていた。
 二対一の戦闘中らしい。念とか使わない人にしては結構動きが早い。
 二対一だけど、優勢なのは一人の方だ。

 さて、どちらかだけでもどんな陣営かわかるといいんだけど。

 私は岩陰にしゃがみこんで勝敗がつくのを待った。
 面倒だから誰か情報をポロリと喚いてくれ、何て言っても声の届く距離じゃないしな。
 

 待ってる間に辺りの植生を見る──この広葉樹の感じだと、日本かそれに近い世界で良さそうだけど……


 あ、戦闘が終わった。
 やるな、予想より早い。

 勝ったのは一人の方みたいで、ただ、命までは取らなかったようだ。二人はばらばらの方向に逃げてく。


 んー……関わるなら、勝者の方かな。


 少しだけ考えてそう決めて、私は絶を緩める。

 勝者の進行方向。わざと音をたてて茂みを掻き分ける。


「──誰だ!?」


 警戒を露に叫んだ人は、壮年の男性だった。
 若い頃にはなかなか目立ったろう彫りの深い西洋風の整った顔立ちに、服装は渋い風合いの着物。足元は足袋。

「幼子……? 何故こんな山奥に……」
 男性は離れたところに留まったまま訝った。
 用心深い質らしい。

 私も男性と目が合った、その時点で進むのをやめた。
 勢いで攻撃されるのは面倒。

「童、この様なところでどうした?」
「……」
「一人か? この辺りに家はなかったと思うが……」
 何も答えない私に問いを重ねる男性。
 その問いには、目を伏せて淡々と返す。

「一人です。此処が何処なのかも存じません。先程目が覚めてから、人に御会いしたのは、おじ様が初めてです」
「何と面妖な。こんな山奥でこれ程達者に喋る幼子に逢うとはの」
 男性は感慨深げに顎を掻いた。

「童、名を何と申す?」
「……」

「ふうむ、名はないか、はたまた、簡単には名乗れぬ、か」
「……」

 名は時として呪力に縛られる──そんな話をしたのは、ディード達と旅をしていたときだっけか。

「歳は幾つじゃ?」
「解りません」

「ほう、解らぬか、ほう」
 答えてないのと大差ない回答なのに、男性は面白がるように目を輝かせた。

 じり、と心持ちだけ、距離が詰まる。

「目覚める前は何処に居った? 見慣れぬ衣を纏っておるが、南蛮人には思えぬのでな」

 南 蛮 ──!

 つまり、此処は日本で合ってるのか!

 しかも服装と話ぶり的に、室町とか戦国?!


──時宗丸は……成実はいるんだろうか。

 連想して、心が痛んだ。



「……どうじゃ?行くところがないならば、儂についてくるか?」
 私が余程沈痛な顔をしてたんだろう。男性は表情を改めて誘い掛けた。

「行く処なんて、特にありません」
 私はとっくに朧気な成実の笑顔を追い払ってポツリ、呟いた。

 もし仮にこの世界に時宗丸が居たとしても、それは私の知る時宗丸じゃない。会えばきっと、思い知らされて辛くなる。

 もし仮にこの世界の時代が時宗丸達と過ごしたのと同じくらいの時間だったとして、訪ねた先に時宗丸が存在していなければ──虚しくなるだけだから、そんな仮定はやめにしよう。

「ならばひとまず、儂の所に来るといい。山奥の小さな襤褸屋じゃが、幼子の一人くらい世話できぬほど落ちぶれちゃいない」
「宜しいのですか?」
 おずおずとした調子で、私は言った。遠慮勝ちな子供、それを装うように。

「幼子一人放り出して帰るのも寝覚めが悪い。それに童の相手はなかなかに退屈せずに済みそうじゃしな」
 男性はニヤリと笑って私の頭上で手を弾ませた。
 警戒心を刺激しない、絶妙な仕草で距離は詰められていた。

 それから、私の名乗りを促すように、彼は告げた。

「儂は竜王丸と呼ばれておる。引退間際のフリーの忍じゃよ」

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