管理サイトの更新履歴と思いつきネタや覚書の倉庫。一応サイト分けているのに更新履歴はひとまとめというざっくり感。
本棟:https://hazzywood.hanagasumi.net/
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〓 Admin 〓
「ウェルカム! ようこそ夢の世界へハッピーハロウィーン!!」
突然茅紗の目の前に現れたのは、どこか見覚えのある丸耳カチューシャをつけた、性別不詳の人物だった。
「お客さん達運がイイネ☆ 二泊三日のスペシャルイベントに大当選しちゃうんだからさ!
費用は当社負担、お客さんはたっぷり楽しんで旅の終わりに簡単なアンケートに答えてくれればそれでOK!
すっごくお得デショ?
あ、でもでも各アトラクションの優待とかは入ってないから人気の奴は自力で並んでナ☆」
勝手に捲し立てられ、困惑して辺りを見回す。
茅紗の周囲は何もなく薄暗いがらんどうの空間。茅紗とカチューシャの他にいるのは、警戒の表情で相手を伺うヘンゼルばかり。カチューシャがぱちんと指を鳴らすと、二人の正面──つまりカチューシャの背後に、茅紗にとっては見覚えのある建造物や風景が浮かび上がってきた。
彼女がそれを見るのはいつ以来だろうか──そもそも、異世界に来てしまった以上再びお目に掛かる日が来るとは思っていなかった。
懐かしさが茅紗の心を揺さぶる。それはヘンゼルにも伝わったようで、カチューシャを不審げに睨みながらも彼は茅紗を気にしている。
ヘンゼルは無言で茅紗の腕を掴んだ。
「え? 帰る気? ダメダメ。帰さないヨ。だいたい何処から帰るつもり? ほら、出入り口なんて後ろのどこにも見当たらないデショ?」
カチューシャの言うとおり、どこにも出口らしいものは見当たらない。
ヘンゼルは横目にそれを確かめるとチッと舌打ちして眉間に皺を寄せた。
カチューシャはヘンゼルの殺気など気にした様子もなく、
「連絡用のケータイはっと……」
パチンっと再び指を鳴らすと、茅紗達の目の前にそれぞれ二つ折りタイプの携帯電話が降ってわいた。
反射的に掴み取り、茅紗はその画面を開いてみる。二つ折りだが、ガラケーにしてはやたらと鮮明で繊細な描画表示。ホーム画面からOSは特定できず、MicroSDのロゴはあるがカードスロットが何処にあるのか、充電プラグの差込口なども見当たらないのが茅紗の知っている携帯電話と違っているところだ。
「操作方法はカノジョの方が良くわかってるカナ?
写メったデータカードは最終日にちゃんと進呈するから、沢山撮って思い出残してネ~」
携帯にはインカメラもアウトカメラも備わっていた。
茅紗は勘でアドレス帳を開く──登録番号は3件のみ。一つはヘンゼル、それから知らない女性の名前と、彼女には偽名としか思えない──
「あ、そうそう! もう一組の当選者にも紹介しなきゃだネ!」
そこでカチューシャは手を叩いた。
するとカチューシャがもう一人──最初のカチューシャの隣に出現する。こちらも性別不詳。体格も先のカチューシャと大差ない。更に茅紗達のすぐ傍にも微妙な表情をした男女が姿を現した。
何処からかやってきたというよりは、それまでもそこに存在した者が覆いを除かれて認識できるようになったというのが正しいだろうか。相手の側からすれば、茅紗の方が突然に現れたように見えたことだろう。
そして茅紗は、携帯に登録された名前が偽名ではないことを理解した。
「「じゃあ、閉園時間になったら迎えを寄越すから、それまでごゆっくり~!」」
茅紗が目の合った女性とへらり、愛想笑いを交わし合っている間に、カチューシャ二人はにこやかに手を振って姿を消していた。
代わりに、四人の目の前にはテーマパークへと通じるゲート。
各々の手には携帯電話と、人気キャラクターがプリントされたパスポートチケットが残されていた。
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突然茅紗の目の前に現れたのは、どこか見覚えのある丸耳カチューシャをつけた、性別不詳の人物だった。
「お客さん達運がイイネ☆ 二泊三日のスペシャルイベントに大当選しちゃうんだからさ!
費用は当社負担、お客さんはたっぷり楽しんで旅の終わりに簡単なアンケートに答えてくれればそれでOK!
すっごくお得デショ?
あ、でもでも各アトラクションの優待とかは入ってないから人気の奴は自力で並んでナ☆」
勝手に捲し立てられ、困惑して辺りを見回す。
茅紗の周囲は何もなく薄暗いがらんどうの空間。茅紗とカチューシャの他にいるのは、警戒の表情で相手を伺うヘンゼルばかり。カチューシャがぱちんと指を鳴らすと、二人の正面──つまりカチューシャの背後に、茅紗にとっては見覚えのある建造物や風景が浮かび上がってきた。
彼女がそれを見るのはいつ以来だろうか──そもそも、異世界に来てしまった以上再びお目に掛かる日が来るとは思っていなかった。
懐かしさが茅紗の心を揺さぶる。それはヘンゼルにも伝わったようで、カチューシャを不審げに睨みながらも彼は茅紗を気にしている。
ヘンゼルは無言で茅紗の腕を掴んだ。
「え? 帰る気? ダメダメ。帰さないヨ。だいたい何処から帰るつもり? ほら、出入り口なんて後ろのどこにも見当たらないデショ?」
カチューシャの言うとおり、どこにも出口らしいものは見当たらない。
ヘンゼルは横目にそれを確かめるとチッと舌打ちして眉間に皺を寄せた。
カチューシャはヘンゼルの殺気など気にした様子もなく、
「連絡用のケータイはっと……」
パチンっと再び指を鳴らすと、茅紗達の目の前にそれぞれ二つ折りタイプの携帯電話が降ってわいた。
反射的に掴み取り、茅紗はその画面を開いてみる。二つ折りだが、ガラケーにしてはやたらと鮮明で繊細な描画表示。ホーム画面からOSは特定できず、MicroSDのロゴはあるがカードスロットが何処にあるのか、充電プラグの差込口なども見当たらないのが茅紗の知っている携帯電話と違っているところだ。
「操作方法はカノジョの方が良くわかってるカナ?
写メったデータカードは最終日にちゃんと進呈するから、沢山撮って思い出残してネ~」
携帯にはインカメラもアウトカメラも備わっていた。
茅紗は勘でアドレス帳を開く──登録番号は3件のみ。一つはヘンゼル、それから知らない女性の名前と、彼女には偽名としか思えない──
「あ、そうそう! もう一組の当選者にも紹介しなきゃだネ!」
そこでカチューシャは手を叩いた。
するとカチューシャがもう一人──最初のカチューシャの隣に出現する。こちらも性別不詳。体格も先のカチューシャと大差ない。更に茅紗達のすぐ傍にも微妙な表情をした男女が姿を現した。
何処からかやってきたというよりは、それまでもそこに存在した者が覆いを除かれて認識できるようになったというのが正しいだろうか。相手の側からすれば、茅紗の方が突然に現れたように見えたことだろう。
そして茅紗は、携帯に登録された名前が偽名ではないことを理解した。
「「じゃあ、閉園時間になったら迎えを寄越すから、それまでごゆっくり~!」」
茅紗が目の合った女性とへらり、愛想笑いを交わし合っている間に、カチューシャ二人はにこやかに手を振って姿を消していた。
代わりに、四人の目の前にはテーマパークへと通じるゲート。
各々の手には携帯電話と、人気キャラクターがプリントされたパスポートチケットが残されていた。
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