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「バカだな、お前」
 経過を聞くなり嘲笑ったのは勿論三郎だった。

「どうせならそんときに付き合ってる宣言しときゃ良かったんだろうが」
「──! それは、そうなんだけど!!」
「それとも何か、言えない理由でもあるのか?」
「別に、そんな……!」
「雷蔵や私を巻き込んでるんだ、詰まらん幕引きは認めんからな」
「詰まるとか詰まらんとかの問題じゃないわ!!」
 ムカついたからグーで殴った。

 言われなくても、何なん、自分? って思ってるわ。

 そもそもあたしと雷蔵が付き合ってるって噂は前からあって、どこからか(ていうか明らかに三郎から)現状聞き付けた勘ちゃんとかは、
「もっとベタなアピールすれば良いじゃん♪ お弁当あーん、とかさ」
なんて面白がった。でもその提案は──

「ばっかお前。そんなん付き合う前からやってるぞ、コイツら」
「ナニソレ、幼馴染み怖い」
「勘ちゃん入院中だったから知らないんだな。だから付き合ってるとか噂が出たんだよ」
「三郎もあったしな、あーん、事件」
「事件と言えば事件だが……こいつの壊滅的な魚の身のほぐし方見たら、誰だって手出ししたくなるだろうが!!」
「っ悪かったねぇ!」
「僕も魚の食べ方巧くないから、やっぱりそういうのは三郎になるよね」
「雷蔵……」

 そんな風に茶々を入れられながら、あたしと雷蔵のオツキアイは続いていた。

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「あれ、十六夜先輩当番じゃないのに珍しっすね」
 放課後、図書室。

 顔を出すときりちゃんが目を丸くした。
 悪かったなー、図書委員のクセに図書室の似合わない先輩で。

「あたしの目が届かないところでもきりちゃんが真面目にやってるか見に来た」
「なんすか、それ。十六夜先輩はともかく、中在家先輩いるのに手抜きなんてできるわけないじゃないっすか」
 生意気に半目で見てくるきりちゃん。ちょっとくらい乗ってくれても良いじゃんか。

 それはともかく。

 今日の当番は中等部がきりちゃんと怪士丸、高等部は中在家先輩とそれから──
「比菜子、早いね。どこかで時間潰してても良かったのに」
「なんだ、雷蔵先輩と待ち合わせっすか」
 きりちゃんは興味を失ったようにカウンターの奥に引っ込んだ。
 勿論、雷蔵も今日の当番の一人だった。でなきゃわざわざ当番休みの日にまで図書室には来ない。
「様子見に来た。雷蔵もカウンター?」
「うん。ここで待ってる?」
「じゃ、そうする~」
 あたしは荷物を適当な机に置いて、書架から重たい画集を持ってきた。普通の本なんて読んでたらお休み5秒だし、真面目に自習なんて柄じゃない。暇潰しっていったら、こういう眺めてるだけでいいのしか思い付かなかった。

「え──十六夜先輩!?」
 怪士丸にまで驚かれたし。

 閉館五分前。

 残ってる生徒の追い出しが始まって、カウンターの辺りは貸出と返却でバタついてる。
 返却棚に溜まった本を抱えて、カウンター当番じゃないほうの二人が書架の間を行ったり来たりしていた。
 カウンター当番じゃないほうの二人──中在家先輩も。

「……」
「……」

 あたしはペコリと会釈した。
 中在家先輩は何か考えるみたいな目であたしを見下ろしてくるけど、会釈を返して重たい本の片付けに入ってしまった。
 私語厳禁の当然の対応。
 だけど、あれ? 何かがしっくりこない……

 ……

 …………

 ………………

「……ま、いいや」
 考えてもわからないならしょうがないし。

 考えてる間に利用者はどんどんはけてく。あたしも何描いてるのかよくわかんない画集を閉じて、帰る準備をすることにした。


 画集のある書架の辺りは、元々利用者が大していないせいでいつもろくに隙間がない。あたしが図書委員じゃなかったとしても、本を戻す位置はすぐに見つけることができた。
 画集をそこに押し込んで、振り返る。

「──っ!?」
 ビックリしたぁっ!!

 目の前に、壁ができてた。

「……」
 いや、壁じゃ、ない。

「十六夜、モソ」
 中在家先輩、だ。

「この後、少し残れるか、モソ」
 図書委員長の中在家先輩が閉館間際とはいえ図書室で私語なんて……!!

 じゃ、なくて。

 カウンターからは死角。後ろは書架。目の前には、先輩の制服──近すぎて、顔を思いきり上向かせなければ先輩の表情は見えない。

 ち、近すぎる……!

「~っにか、急ぎの仕事ですかっ?」
「いや、モソ…………時間は、あるか、モソ」
 いちるの望みをかけて絞り出した言葉は、速攻で否定されてしまった。
 て、事は。

「……」
 あたしは自分の迂闊さを呪った。
 雷蔵と付き合ってますアピールをすることに気を取られ過ぎて、こないだ変なところで先輩の話をブッチした事忘れてた……!

 さっきの「あれ?」はこれだったのか!!

 自意識過剰の思い過ごし──なんて笑い飛ばせないのは、逃げ場のない今の状況とか、モソモソしてる中にそこはかとなく感じる色気というかなんというか……ゴニョゴニョ。

「……」
「……」

「比菜子、どこだい? そろそろ閉館するよ」
「雷蔵!」
 雷蔵の声は、まさしく天の救けだった。

 隣の通路を覗いてたらしい雷蔵は、あたしの声を聞いてすぐこっちに来てくれた。
「……中在家先輩?」
 あたしじゃなくて中在家先輩がまず目についたらしく、雷蔵はきょとんとした声をあげる。

「雷蔵、か……モソ」

「あ、あのっ、約束があるので!」
 あたしは口早に断ると、先輩の前から抜け出して雷蔵に駆け寄った。
 状況を察したらしい雷蔵はあたしの肩を引き寄せて、
「慌てると危ないよ」
ニコッとあたしを安心させる笑顔をくれた。

「…………」
 背中に刺さる、中在家先輩の視線。雷蔵は申し訳なさそうな上目遣いで先輩を見上げる。
「すみません、先輩。比菜子は僕と一緒に帰る約束なので」
「…………わかった、モソ」
 溜め息が、落ちた。
 中在家先輩の視線が剥がれて、荷物を置いてた机に戻るまで、雷蔵はあたしの肩を放さなかった。

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 それからのあたしの生活と言うと、取り立てて代わり映えはしなかった。

 元々付き合ってるネタにされるくらいには雷蔵と仲良かったし(三郎は認めん)敢えて言い触らすのもわざとらしかろうと言うのが三郎の作戦だった。
 例えばお互いにケータイの待受が相手の写真に変わってたり(改めて撮るまでもなく写真データは豊富に揃ってた。幼馴染みちょー便利)、さりげに雷蔵の呼び方が「比菜子ちゃん」から「比菜子」に変わってたり、そんな些細な変化。
 一応、昼や帰りを合わせることも多くなったけど、そんなことは前から時々あったし、気付いたのなんて竹やんとかあいつらとやたら仲良い連中と後少し位だった。


 意外だったけど、その、「後少し」に沙彩ちゃんもいた。
「あの……不破くんって前から十六夜さんの事呼び捨てにしてた?」
「うーん、最近、かな」
「そう……だよね。どうして、突然……」
「あたしら付き合う事になったから」

「え……!?」

 瞬間、沙彩ちゃんは「茫然」ていうか「愕然」て見出しがつきそうな顔で固まった。
「え、そんな……だって、この間中在家先輩と……」
「あー、ゴメン。あれ見てたんだ? あの日ちょっとぼーっとしててさ。後輩が心配するから付き添ってくれてただけなんだ。紛らわしかったよね~」
 なるべくなるべく、軽い口調で言い切った。

「だから先輩とは何でもナイよ、安心して☆」
「……そう、なんだ…………」
 ゆるゆると硬直を解いた沙彩ちゃん。ホッとしたのかな。遠慮がちないつもの笑顔、少し歪んで。
「こっちこそ、変なこと聞いて、ごめんなさい」

 よし。
 沙彩ちゃんの誤解はこれで解けた、と。

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「一応聞くが、お前は何をしたいんだ?」
 あたしが話し終わって、口を開いたのはやっぱり三郎だった。

「何をって、言われますと?」
「比菜子ちゃんの話聞いてると、僕の出る幕じゃない気がするんだけど……」
 むむ、雷蔵まで!

「いやむしろ雷蔵でしょ?! 他選択肢ないでしょ!」
「えぇっ?! どこら辺が?!」
「まぁ、私か雷蔵と付き合っているのが明白になれば先輩への言い訳も立つものなぁ」
 三郎はグラスの縁を徒に弾きながら唇を歪めた。
 わかってるなら、わざわざ聞き返さないでほしい。

「それで中在家先輩は姉小路に譲る気か。いいご身分だな」
「……やっぱ感じ悪いよね──ごめん、忘れて」
 全部話した後で冷笑で指摘されて。あたしはずぶずぶクッションと一緒に床へ沈み込んだ。これしかない! ってさっきまであんなに盛り上がってた気分が、一気にぷしゅーっと抜けてしまったみたいだった。

 だから。

「うーん……そういうことなら、僕は別にかまわないよ」
「え?」
 咄嗟に、なんて言われたのかわからなかった。

 今の話の流れなら、雷蔵にも諭されたっておかしくないのに。
「比菜子ちゃんが本気で中在家先輩とは付き合いたくないっていうなら防波堤ぐらいにはなるし、それに
(──そのくらいで簡単に諦めるみたいな生半な気持ちで、ウチの比菜子にちょっかい出してほしくないなって)」

 それに、で雷蔵は口を噤んだ。続きが気になる。けど知らない方がいい気もする。
 三郎は苦笑して肩を竦めた。
「相変わらずこいつに甘いな、雷蔵」
「三郎だって。僕が言わなかったら同じこと言ったよね」
「さぁな。兎も角、これであの先輩がどう出てくるか──楽しみだ」

 そしてあたしは、先輩の「話」を聞かなくていい免罪符を手に入れたのだった。

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「はぁ……GWは結局生き物の世話だけで終わったな~」
「湿気た顔してんなぁ、ハチ」
「三郎! お前はいいよなぁ、女なんて取っ替え引っ替えできて」
「ちょっとハチ!? 三郎増長させるようなこと言わないでよ。はぁ……」

「雷蔵、どしたんだ?」
「街をぶらついてたら逆ナンされただけだ」
「三郎と出掛けるといつもそうだ。まったく勘弁してほしいよ」
「悪かったって。だから今日は早めに断っただろう」

「は? て、おま……俺と出掛けるときはそんなん全然!」

「その方いいよ、絶対」
「いやいや、イヤイヤイヤ……え、それってどういう」

「(あわわ、ハチ落ち込んじゃうめんどk)そ、そうだハチ、こないだハチが良いなって言ってた子を見掛けたよ!」
「あー、5組の萬里小路さんな。同じ部活の子達とお茶してたぜ」
「萬里小路さんが!? どこだ、どこの店!?」
「うわっ、食い付き良すぎるのは退かれるよ!」

「別に退かれても良いんじゃないか?」
「ちょっと三郎!!」
「だって知ってるか? 萬里小路さんって……いや、普通にばらしても面白くないな。5択にしてやろう」

「5択!?」

「壱、萬里小路さんは七松先輩と付き合ってる
 弐、萬里小路さんは立花先輩の義理の妹
 参、萬里小路さんは七松先輩の義理の妹
 肆、萬里小路さんは潮江先輩の崇拝者
 伍、萬里小路さんの理想のタイプは七松先輩
 さあどれがいい?」

「三郎っ」
「ちょっと待て!!」
「ではそこで待ってる(くるっ)」
「じゃねぇよ!! 何でそんな七松先輩の選択肢が多いんだよ!?」

「いや、まぁそれはなぁ……」
「え、えぇっと……」

「それがハチの運命としか言えないわな」
「そんな運命要らねええっ!!」

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