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 送られたその場所は、冬の奥州並みに雪深くて、欧州の様なつくりの家が立ち並ぶ雪の街だった。
 此処でも私は、私塾に通うことになった。

 もとはローレライ教団のお偉いさんらしいという美人のネビリム先生は授業が面白くて、学ぶことが何度目かよくわからない私にも新鮮な話が多かった。
 同じ私塾にはまだ目が赤くないジェイド少年や、大人になってからの揶揄通り洟垂れ小僧なサフィール少年も通っていて、二人とも優秀な成績を修めていた。つんけんしたジェイド少年に目をつけられるのも、甘ったれなサフィール少年に絡まれるのも面倒そうな気がしたので、私は目立たないよう適度に誤った回答を織り交ぜるようにしておいた。例によって、ネビリム先生にはお見通しだったようだけれど。

 ファンタジー世界の女性陣ってなんでこう勘が鋭いかな。

 ジェイド少年とサフィールが何かしでかして、私塾にはフランツと名乗る傍若無人な金髪少年も顔を出すようになった。ジェイドも美少年だけど、表情の乏しい彼に比べて、ふてぶてしい位の笑顔が似合うフランツ少年は種類の違う美形だった。塾の数少ない女の子達は、フレンドリーなフランツ少年にきゃあきゃあ楽しげに騒いでいた。

 私は学友達の騒ぎからは常に一歩身を引いていた。
 身体の震えはとうに収まっていたけれど、四肢は自由に動かせるようになっていたけど、私の惨状を目の当たりにした時の大切な人達の表情がふとした瞬間に目の前の相手にダブってしまって、親しくなることそのものが怖くなった。
 それに。
 天才と讃えられることになるジェイド少年の目が、時に訝るようにこちらに向けられる瞬間があって、怖かった。 いつもは見られないことをいいことに気ままに周りを観察しているジャックフロストでさえ、好奇心よりも警戒心を優先させて私の奥底に引っ込んでいるくらいだった。
 成人したジェイドは食わせ物だけれど、このころのジェイドには人として基本的な箍がどこか外れっぱなしだった。関わるのは正直、一番怖い相手だった。

 だから勿論、ケテルブルクにいる間「フランツ」と話をしたことも数えるほどのことでしかなかった。
 数年後グランコクマで再会した時に、まさか覚えていて声をかけられるなんて考えてもみなかったくらいに。

 グランコクマに移る前の一時、私は家族の(この世界では、珍しく、血縁関係のあることになっている家族がいた)預言の影響でホドに移り住んだ。
 ガルディオス伯爵家の邸宅は遠目に見たくらいで、願ったわけでもないのにフェンデ家の少年とは知り合いになった。いや、シグムント流の剣術を習いに行ったのだから必然か。

 ホドに移ってすぐ、ネビリム先生の訃報を聞いた。

 数年後、キムラスカとの戦争激化によって私は家族ともどもグランコクマに移住することになった。
 共に引き上げてきた研究者達の中には、カーティス家の養子となったジェイドもいたようだった。
 目の色はもう赤くなっていた。

 シグムント流剣術を修めていることを何故か知っていたジェイドの勧誘(と言う名の脅し)で、私はマルクト軍に入隊した。ピオニー殿下との出会い(と言う名の再会)はその後だった。
 上官として無茶振りしてくるジェイドの所業にささくれ立った心を癒してくれたり逆撫でしてくれたりする殿下とは、いつしか気の置けない関係になっていた。恐れ多いとか、そんなものは感じなかった。あの人の破天荒ぶりは、そういった形式ばった感情をたやすくどこかに押し流した。

 ジェイドの課した無茶振りに、経験+オールドラントで得た全技能を駆使して応えていたら、私の階級は馬鹿らしいほど簡単に佐官に到達していた。と言っても少佐どまりだ。上官が大佐より上に行きたがらないための頭打ちだった。肩書としては、第三師団師団長付補佐官が私の公の立場になった。
 ホドは崩落して跡形もなく、戦争はうやむやのうちに冷戦へと移行した。殿下は即位して、立派な皇帝として人民に慕われるようになった。


 ジェイドが陛下の勅命を受けタルタロスで旅立った時、私は残された第三師団の調練を委ねられたので別行動だった。
 本当はついて行ってマルコ達の運命を変えてしまいたかった。けれど異論は認められず、委ねられた部下を放置もできずグランコクマで燻っていた。
 タルタロス襲撃の方が届いて初めて、陛下は私に真偽の調査の密命をくれた。部隊の調練は、第一師団のアスラン少将が持ってくれることになった。
 向こうがごたごたもたもたしてたのと、こっちが裏技を持っていたおかげで、セントビナーを出発するところに合流することができた。ジェイドには陛下の事を含めて呆れられた。

 以降は概ね、筋書き通り。
 変えることができたのは、瘴気に蝕まれかけたティアをあらかじめ救うこと──主に念能力が役に立った。それにより、レプリカイオンの存命期間は長引いた。
 あとは、崩落編後に命を落とすはずだったアスラン少将を助けた、はず──断定できないのは、その後の出来事を私が知らないからだ。

 アスラン少将が襲われるはずの場面で、私も軍事演習を手伝っていた。
 その場で襲われたのは、私の方だった。
 その時かそれより前なのか、レプリカ情報も抜かれたらしい。その場では襲撃者は撃退して、ケテルブルクの山奥に出没する化け物──レプリカネビリムの討伐に参加するあたりから体調が思わしくなくなった。
 それがレプリカ情報を抜き取られたせいだとわかったのは、不覚にも自分自身のレプリカと対面した時になってからだった。レプリカユキヤは、レプリカネビリムとは別の意味で不完全だった。完全になりたがって、私に襲いかかってきた。でもその攻撃は無駄だった。

 それより先に、私が倒れたから。

 余裕をなくして必至そうな顔のジェイドを、初めて見た。

 私が倒れると同時に、レプリカは自然分解されていった。
 だから残る仲間達も警戒を解いて、私の周りに集まってきた。私の身体は元々音素のバランスがまともではなかったから、レプリカ情報を抜かれたのが致命的だったのだとジェイドは言った。普通とは違うあれこれに気付いていながら、指摘することなく実はフォローしてくれていたことを、その時になって私は初めて知った。

 失敗したなぁ、とちょっと思った。

 ジェイドの方を好きになっていれば。もう少し関わり方を変えていれば、私はもっとこの世界で長く過ごせていたかもしれないのに。

 音素乖離が勢いよく進行した私の身体は、絶望に歪むジェイドの腕の中で瞬く間に音素に還って行った。

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 気が付いた場所は、どちらかといえば群島かリィンバウムのどこかを思わせるような小村だった。

 戦災孤児の一人として私が引き取られた先には、同じ年くらいの穏やかな性格の男の子がいた。
 男の子の名前はエト。村には他にも同じくらいの年齢の子供が何人かいたけれど、騎士の子だというパーンがエトの一番の仲良しだった。
 エトは至高神ファリスに仕える神官となるべく修行を積んでいる子で、パーンは騎士を志して体を鍛えていた。治癒系と物理系ときたら魔法系かなぁ、とバランスを考えて、賢者の学院へ進んでいたスレイン宅へ忍び込んで私は魔術の勉強を進めていた。

 スレインが村で隠遁生活を送るようになってからは勿論、忍び込むなんてできなくて、正直に教えてほしいとまとわりついて押しかけ弟子の地位をもぎ取った。スレイン兄てば村の女の子に問答無用で魔法攻撃仕掛けてこようとするんだもの、つい流水の紋章で対抗しちゃったよ。おかげでその魔法は何だ、みたいに問い詰められてちょっと辟易した。エトを盾にして許してもらって、代わりにエトから説教を喰らった。
 のどかな生活だった。

 独り立ちしても良いくらいに成長して、つまりはそろそろどこかに嫁に行けと言われるくらいの年齢になって、私は冒険の旅に出るエト達にくっついて村を離れることにした。
 ゴブやホブゴブ程度で苦戦している彼らの事が心配だったし、仲の良いエト、パーン、スレイン兄がいなくなる村にあまり魅力は感じなかった。
 旅には他に、近くのマーファ神殿から攫われた侍祭を探すドワーフのギムも同行した。

 トラブルホイホイであるパーンの働きでハイエルフのお姉さまが仲間に加わり、胡散臭い盗賊のウッド・チャックも加わった。主要メンバー勢揃いで迎えたクエストは、攫われた侍祭ならぬ神聖王国ヴァリスの姫君を助け出す快挙となった。これをきっかけに、後に英雄戦争と呼ばれることになる動乱の真っただ中に飛び込んでいくことになったわけだけれど、私はどうにも乗り切れなかった。

 ハイエルフのディードには、私の隠し持つ力の事やペルソナの事が漠然と見えているようで常に警戒されていたし、フレイムのカシュー王や名だたる剣の使い手達からは、身のこなしが魔術師じゃないと興味を惹かれ、パーンよりも先に仕官の話を貰いそうにもなった。
 途中からは開き直って「戦う魔法使い」なんて未来の誰かさんが自称する名乗りをあげるようになったけど、もやもやする気持ちはずっと胸の奥にくすぶっていた。

 私は作戦の都合上、他のパーティメンバーとは別行動することが多くなっていった。
 その方が気楽だったし、フレイム騎士の剣技を眺めたりしていると気が紛れた。勿論、単独で与えられた仕事をこなしている間は集中せざるを得ず、余計なことを考えている暇もなくなった。

 だから私は、英雄戦争の終結間際にも、エトやパーン達とは離れたところに居た。
 父王を喪い悲しみに沈むフィアンナ姫を慰めるエトを、シャダムの後ろから見ていた。


「要するに、あなたは少し前までの私と同じなのね」
 久しぶりに合流したディードは私に溜息を吐いた。

「自分の気持ちに臆病になっている。本当はとっくに、気付いている気持ちに、ね」
 そんなことを言われても、どうしようもなかった。
 だから私は笑ってごまかして、カーラとの最終決戦に加わった。それがこのパーティでの最後のクエストになることを知っていたから。

 この戦いが終わったらほどなく、エトはヴァリスで神官王として推挙される。王妃はフィアンナ姫──それが正しいロードス島の歴史。それを覆す度胸を、私は持ち合わせていなかった。

 代わりに私がしたことは──

 仲間達一人一人の驚愕の顔をはっきり覚えてる。
 命を落とす運命だったギムは、紋章の力で存えさせた。戦いの行方がどうなるにせよ、私が全力で叩き折ったフラグの結果、私がこの場所に居られる時間は残り僅かと想像できたから、出し惜しみなくあらゆる力を使った。
 一番驚いていたのは、幼馴染の二人だった。スレイン兄はあまり驚かなかったけど。

 いや、彼らが驚愕したのはそんな事ではなくて。

「後始末はよろしくね?」

 すばしっこさが売りのウッドをすら出し抜いたことにほくそ笑んで、私はセルフオーバーコントロールを発動したままに、カーラの意識が籠ったサークレットを額に装着した

 肉塊の中に埋もれたサークレットを、流石のウッド・チャックも改めて額に嵌めようとは思わないだろう。
 私がしたことは、ウッド・カーラの暗躍を未然に防ぐことだった。



 私がしたことは、大好きな幼馴染達にこの上もないトラウマを刻みつける行為だった──


 真っ青な顔のエトを見て、初めてそんな単純な重罪に気付かされた。

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 葛葉寮内で片付ける問題の筈が、他人を巻き込む気満々のヒロイン達。さり気に七緒の行動を把握している飛鳥は敵に回してはいけない系風紀委員。どっちかって言ったら七緒の味方ですけどね。

 縁側で更新したのも婆沙羅だし、そろそろ違う系統のも更新したいなぁ……と思ったら、まっとうにストックがあるのはばさらん系ばかりだった

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「ちょっとそこのお姉さま♪」
 ユキヤが声をかけられたのは、一人で商店街を歩いているときだった。

「おもしろ~い相をしてるわね。まるでこの世界の外側を知ってます、みたいな珍しい気配」
 浮き浮きとした声の主は、一目でシルターン系の召喚獣とわかる容姿の少女。ユキヤが足を止めると、ばっと背後に構える物を腕で示した。
「ここで袖振りあったのも何かの縁! シャオメイちゃんの所で1つ運試しでもしてみな~い?」

 赤を基調とした派手派手しい建物。そんなものが路地裏に突然どでん、と存在するのだから、呆れてしまう。つい先日通りかかったときには、こんな目立つ建物は存在しなかった。

「お嬢ちゃんこそ、龍殺しとか何本も飲み干すうわばみの相が透けて見えるよ」
「ぎ、ぎくっ! シャオメイちゃんお子様だからわかんな~い! そ・れ・よ・り、当たるも八卦当たらぬも八卦、今なら特別お試し特価! で籤を引かせてあげちゃいますぅ」
「特価……なんだ?」
「そ! 大特価!」
 シャオメイはふふん、と胸を反らした。
「いつもならお題はおいし~い飴玉ひとつ! お願いするところなんだけどぉ、今回は特別、金平糖一粒で引かせてあげちゃう!」
「こ、金平糖……?」
 ユキヤが歪な笑顔になったのは、指定されたものが理解できなかったからではない。
 留守番しているコーラル達へのお土産にと、先ほど入手したばかりの物だったからだ。

──なんでわかってるんだ、このヒト……ていうかメイメイさん。

「えー、その……一粒、で、いいんだよね?」
「おーるおっけー、じゃ、こっちへどうぞ~」

 一人分ずつ小袋で買ったのであれば応じることはできなかった。が、量り売りでまとめ買いしたので一粒くらいなら問題はない。恐ろしいのは、それさえ見越したようなシャオメイの要求だった。
 ピンク色の金平糖を嬉しそうに口に運んで、シャオメイは見覚えのあるスクラッチ籤を一枚ユキヤに手渡した。
 ゲームの画面ではともかく、改めてリィンバウムでスクラッチ加工を目にすると異質である。ユキヤは深く考えないように思考に蓋をして、銅貨で適当に丸い銀色を擦った。

 結果は──

「……大当たりい~♪」
 カランカラン。
 他に誰もいないのにわざわざ鐘を鳴らしてシャオメイはユキヤを祝福した。

「え~と、今日の特賞は……黄太鳥の鞄ね♪」
「き、黄太鳥……!?」
 聞いたこともない生き物の名前。ユキヤは自分の知る限りのメイトルパの召喚獣を思い出し、次に、勢い余って思い浮かんだ胡麻通りの大きな黄色い鳥のイメージを頭を振って追い払う。いくらなんでもない、それはない。
 するとシャオメイは、得意げになって説明した。

「かつて名もなき世界に存在したっていう伝説の黄太鳥をヒントに作られた万能鞄よん♪
 黄太鳥っていうのはぁ、黄色くて太った鳥の事で、ギサ……ギザギザの野菜? とかそんな感じの名前のお野菜が好物なの! ふつうの消化する胃袋の他に、物を溜め込んでおける不思議な器官を持ってて、持ちきれない荷物の預かりサービスとかに使われてたらしいわ。
 一説によると、その不思議な器官は異次元に繋がっててて、他の黄太鳥との間で物の共有もできてたととか言われてるの!」
「それってまさか……デブチョコボ?」
「そうとも言うかもね。さっすがお姉さま素敵にも・の・し・りなんだからぁ♪」
「……(そうか、この人やっぱ何でもありか)」
 けたけた笑うシャオメイに、ユキヤはがっくりと項垂れた。

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 一人で泣いていた私は幼子で、たまたま通りかかった医者に拾われて養子となった。

 その世界ではあらゆる住民がデータベースに登録されていて、登録されていない人間は裏社会の中でも更に忌避される「人でなし」扱いだった。
 私は拾い主が変わり者の医者だったおかげで、年齢は若干細工されているものの、一般人としてデータベースに登録されることになった。
 私は毒殺された失敗を教訓に、普通の読み書きを学ぶ傍ら薬品に関する研究に没頭した。
 学校には通わなかった。

 年端もいかない子供がやることではなかったけれど、普通でない育ての親は、私の好きなように学ばせてくれた。その普通でない育ての親が医療系ハンターだと知ったのは、拾われてからゆうに十年は過ぎてからの事だった。
 まだ成長期とはいえ身体もだいぶ出来上がり、薬物に関する研究もだいぶ進んだ頃、彼は私にハンター試験の受験を勧めてきた。
 研究分野は裏世界から狙われるような危険な物──自身の身を守るためにも、今後の研究費用を確保するためにも、プロハンターになっておいて悪いことはない、と。

 私は勧め通りハンター試験を受験し、これまでの世界の経験を活かし一発合格を決め、うっかりと幻影旅団の誰かさんと知己を得てしまった。
 試験中のくじで一時期パートナーになってしまったんだからどうしようもない。

 ライセンス取得後その足で家にとって帰り、育ての親に念の師匠になるよう頼み込んだ。
 念を起すところまでは比較的簡単だったけれど、それをきちんとしたものにするまでにはなんと一年半も掛かった。成長速度鈍化のデメリットがこんなところで幅を利かせたらしい。
 開花した念の系統は操作系──私は最初に、自分の身体能力を向上させるための発を作り出した。
 制約や誓約についてはおいとくとして、その能力は「セルフオーバーコントロール」念の発動媒体は、BASARA者らしく天花六花にしておいた。

 シャルナークを始めとする幻影旅団からは度々狙われるようになっていたけれど、彼らが欲しがったのが単なる研究成果ではなくて研究者そのものだったおかげで、私の命は無事だった。
 過去の拷問史で登場した毒の調査だとか、盗み出した骨董品に含まれていた未知の毒物の解析だとか、ただ調べるだけの内容であれば多少は協力した。フィンクスがその未知の毒にうっかり侵されてしまったしまったときはもう……うん。流石に助けないわけにもいかないかと思って旅団のアジトの一つに大人しくついて行ったよ。
 そんなことを続けているうちにゾルディックからも声がかかるようになった。
 ちゃんと表の医療向きの製薬とか薬効の発表とかだってしてるのにだよ? お得意様が賞金首だらけっていうのは医者の養子としても医療系ハンターとしてもいただけない。

 あぁ、そういう連中ばかりじゃなくて、研究材料採取中にかの有名なジン・フリークスにも会った。
 あれはまだハンター試験受験前だったか後だったか。弟子が秘境の毒虫に噛まれたからって連れられて行った密林では、カイトが片手の指では足りない多種多様の毒物に当たって半死半生になっていた。毒虫に噛まれ、刺され、毒蛇に噛まれ、傷口から毒花の花粉が入り込み、更には毒草の汁が溶け込んでしまった水を口に含んでしまったらしい。あれは別の意味で苦労した。
 立ち直った後カイトがジンの弟子を辞めず、ハンター試験に合格してプロハンターになったのはある種の奇跡のように感じたよ。

 マフィアやらゾルディック家やらその他の暗殺稼業の連中やら、そうじゃなくても面倒な客だらけで疲れ果てる私に、クロロは「最初から旅団の専属になってしまえばよかったんだ」等とのたまった。絶対面白がっていた。

 この世界でのゲームオーバーも、やっぱりこの面倒なお客さん達がきっかけだった。
 彼ら同士の抗争に巻き込まれて、とばっちりでウヴォーギンの大声を浴びた。
 慌てていた私は周りに注意しないまま抗争圏から離れるためにセルフオーバーコントロールを発動してしまい──驚いた顔をしていたから、向こうに害意はなかったんだと思う。もしかしたら、私が動けないと思って、逃がすために操作媒体を打ち込んできたのかもしれない。

 でも。

 連続稼働時間10分が、この発の制約。

 発動中に他からの操作を受けた時には操作も記憶の読み取りもできないような肉塊となるのが、この発の誓約。

 私は彼らの目の前で、肉の塊になった。


 ほんの一瞬の出来事だった。

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