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 残された三人はと言うと、実はやることがなかった。

 八左ヱ門がひわを運び込むと、ひなは既に少ない手荷物から薄布を敷布がわりに広げており、そこに寝かせるように誘導された。
 その上に一枚着物を広げ掛けるのは、旅人が木賃宿を利用するときのやり方だ。
 勘右衛門が布団を持って来ることを提案したが、ひなはそれを拒んだ。

「その方良いなら無理強いしないけど、保健室が嫌ならせめてちゃんと休めるようにした方が良くない?」
「よせよ勘右衛門。したら俺らが布団なしだぜ、そこまでするこたねーって」
「どうしよう兵助、珍しく八左ヱ門が冷たい……」
「そうか?」
 兵助はキョトンとする。勘右衛門はもどかしげに、
「だって相手は病人だよ!」
「だからだろ」
兵助の答えは簡潔だ。

「え?」

「ずっと仕舞ってた布団なんて干さなきゃかび臭いし、野郎の汗が染み込んだ布団なんて使いたがらないだろ? 運ぶだけ無駄」
「自虐的だな、おい」
 滔々と語る兵助に勘右衛門は苦笑いで突っ込む。八左ヱ門は手を左右に振って、
「いや」
「八左ヱ門?」
神妙な顔で続ける。

「手負いの動物は慣れない気配と臭いに敏感なんだ。警戒しつづけて休めなくなる」

「「おい!」」
い組の二人は声を揃えた。

「お前なー、いくら生物委員だからってそりゃないだろ」
「人と野性動物一緒にするなよ~」

「八左ヱ門君」
 ひなの声には咎める響きがあった。

 それで二人はますます冷たい目で八左ヱ門を見遣った。例え彼がそう思っていたとしても、本人達の前で言う話ではない──けれど。

「予想したならそれに見合う行動はしてもらえませんか?」

「へ?」
 勘右衛門が間抜けな顔で聞き返す。八左ヱ門はその頭を押さえて、半眼で口角を吊り上げる。

「ほんっとあんたら可愛いげねえな」

 それから勘右衛門の肩を掴んで、
「おら、勘右衛門、邪魔だとよ。とっとと引き上げるぞ」
「へ? え?」
飲み込めていない彼を引きずり歩きだした。

 兵助はやり取りの大意を理解したものの、どうしても気になったことを尋ねる。

「動物扱いってフツー怒るとこじゃないの?」

 ひなは肩を竦めた。
「ひわさんはそんなことで怒りませんよ。察していただいたことはむしろ感謝しています」
「はは、そっか。面白いな、二人とも」
「兵助君──」
「水汲みくらいしておいた方がいいだろ? ひなちゃんはひわさんについててあげなよ」
 兵助は退場宣告が下される前にひらひらと手を振って、桶を掴むと中庭へと歩きだした。

「全く……」
 ひなは溜息で彼を見送った。
 それからふと、己の手と、横たわるひわとを見比べる。

──ひわ「さん」と、ひな「ちゃん」かぁ……幾つに見られてるんだろう?

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やっぱり下書き書いてた時と現在のキャラの認識が違ってきているので言葉遣いに悩む……
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