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もし風音が後5~10歳くらい若くて、この話が執政兄弟夢だったら。

◇本編未読の方のための補足
本来のお相手は緑葉君です。本来の年齢はピピンの1つか2つ位年下……三十路。このifでも風音は成人女性ということです。
更に年齢を下げるパターンも考えたけど、多分10代の風音だったら救済失敗してるだろうなぁと。
場面はメリピピが拐われてアラゴルン達が追跡を開始した後のものです。風音の働きで一命をとりとめたボロミアと彼女とは、ついてけないので別行動。そんななかでの出来事。

◇本編をご覧になっている方への補足
甘々です。
あくまで当サイトとしては、ですが。
本編とかけ離れた糖度です。

それでもよいという方は下の「続きを読む」から(携帯・スマホの方は単なるスクロールですが)






ボロミアフラグ乱立(ボソ)

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「カザネ」
 ボロミアは静かに彼女を呼んだ。

「周りをもっと頼れ。いっそお前が抱え込んでいる秘密ごとを全て吐き出してしまえ、とまでは言わないが、話せば手を貸せることもあるやもしれない。特に私は、自分で考えていたよりもずっと察しが悪い人間のようだからな。言葉にして言われねば、お前が何を必要とし、何を求めているか解らない。だからどうか、話してくれ」
 ボロミアの指が、風音の頬にかかった髪を一房絡め取った。
 ゴツゴツした大きな掌が彼女の頬を包み込む。
「それとも、私はそこまで頼りにならないか?」

「あはっ! ボロミア、それじゃまるで口説いてるみたいだよ」
 風音は茶化すように言った。
 からかいの表情を浮かべようとしたが、どうしてもひきつってしまう。近すぎる距離が、優しく触れる手の温もりが、彼女を落ち着かなくさせていた。

「口説く?」
 ボロミアは目を瞬かせた。
 少しの間、外れた視線が風音の気を弛める。速くなった鼓動を鎮めようと無意識に胸元を押さえていた手を、風音はそろそろと下に降ろし、
「あぁ、そうだな」
ビクッとまた持ち上げた。

「確かに私は、お前を口説いている。私はお前を失いたくない。周りを頼れと先程は言ったが、できることなら真っ先に私を頼ってほしいと願っている」
「ボ……ロミア?」
「お前が全てを賭して私の命を救ってくれたように、私は私の全てで以てお前を護りたい」
「全てで以てって……ゴンドールはどうするのさ」
「ゴンドールの事とお前の事が両立できないとは思わない。
 それが叶わないならば、それは私の努力が足りないだけだ」
 風音の抵抗に、彼はきっぱりと言葉を返した。

 熱意のこもった眼差しは最前よりも更に近く、風音の両足はその場に縫い止められたように後退ることさえできなかった。

「カザネ」
 ボロミアは優しく彼女を呼んだ。

 狭まっていた距離が限りなく縮まり、添えられた手に導かれて上向いた彼女の唇に、温かな温もりが重ねられた。
 頬や顎を擽る髭の感触が、その正体を実感させる。反射的に、風音は目を閉じていた。

 最初、触れるだけだった口付けは、次に啄むように何度も彼女に降り注ぎ、頬に添えられていた手は、いつしか風音を抱き寄せるように背中を降りていった。
 風音はただ流されるまま、彼の口付けを受け入れた。甘い感覚に頭の芯がぼーっとして、抗う事はできなかった。

 彼女がぎりぎり理性を取り戻したのは、ボロミアの舌が口唇を割って侵入してこようとする段階になってからのことだった。

「~っ!」
 風音は彼の胸板を叩いて行為の中断を求めた。
 ボロミアは彼女の唇を解放し、けれど腰は抱き寄せたままの至近距離で風音を見返す。

「ボロミア、傷、響くっ」
 途切れ途切れに、風音は言った。
 すると彼は微笑んで、
「大丈夫だ。これ以上の事はしない──今は、な」
「今はって……!」
「お前の一番無防備な姿を、こんな危険と隣り合わせの野外に晒すのは勿体無い。
 枯れ枝や岩石にお前の柔肌を傷付けさせてまで性急に求めるほど野蛮な男ではないつもりだ」
「なっ……」
 風音は絶句するしかなかった。

 心臓が早鐘のように脈打ち、長くなった耳の先まで熱をあげる。ボロミアの眼差しが愛おしげに細められたのは、きっと熱に伴って相応に赤く色づいて行く様を目の当たりにしたからだろう。
 ボロミアは風音の額に額を合わせた。
「そんな顔をされると自制が揺らぎそうだ」
「!?」
「だが私はお前の身体を知りたいのではなく、許される限りのお前の全てを知りたい」
 彼はその距離から伺うように風音の瞳を覗き見る。
 風音は目を逸らせず、ボロミアの瞳の中で途方に暮れたようにしている自分の姿を見返す。

 未だ見慣れぬその姿は頼りない子供のようだ、と彼女は思った。
 けれど同時に、熱に潤んだ瞳は色気を含んでいて、まるで相手を煽っているようだと彼女を慌てさせた。

「この先こうしてお前に触れ、お前を知りたいと願う事を許してくれるならば、この口付けを受け入れてほしい。
 そうでないならば──いっそきっぱりと拒んでくれて構わない。
 それでも私のお前を護りたいと願う想いは変わらない」

 ボロミアは宣言するように囁いた後、ゆっくり、ゆっくりと顔を傾けた。
 それは風音の選択を待つための時間であり、同時に、彼女にとってはより混乱を深める時間でもあった。

 そして再び唇が重なった。

 ちゅ、と音をたてて一旦離れ、それからまた触れ合った時にはより深く重なり、彼女の唇を味わうようになぞった舌が口内への侵入を果たす。
 拒む、という余裕が風音には無かった。
 またそうする必要も無かったと気付いたのは、ぐい、と腰を引き寄せる強い力を感じ取った後になってからだった。

 最初から、彼女の旅はボロミアのためにあった

 その思いが報われることは考えていなかったから、彼の寄せる甘い言葉や仕草に戸惑ったけれど。

 気付いてしまった風音は、おずおずと彼の口付けに応え、求めに応じて舌を絡める。反応が変わったことに気付いたボロミアは一瞬動きを止め、それから彼女のペースに合わせるように激しさを抑え、その代わりに長く慰撫し合うような口付けを交わした。
 息が続かなくなる程に想いをぶつけ合うような、荒々しい口付けにはならなかった。そうしてしまったらそれだけでは収まりがきかないと、どちらも心のどこかに自覚していた。その分丹念に、互いの唇や舌がもたらす甘さを味わった。


 長く繰り返されたその行為の終わりに、ボロミアは風音の首筋へひとつ痕を残した。
「想いを交わしあった事が、ただの夢ではない証に……」
「こんなの、すぐに消えてなくなるよ」
 鏡を見ているわけではないので、風音の言ったのは照れ隠しだ。ボロミアは悪びれもせずに応じた。
「その前にまた印せば良い。嫌か?」
「嫌じゃ……ないけど」
「ならば良かった。名残惜しいが、そろそろ出発することにしよう。早く目的の場所につければ、その分早く、落ち着いて触れ合えるようになるのだしな」
「ボロミア!」
 晴れやかに笑う彼に、風音はまた顔を赤らめて抗議した。
 けれどそれもまた甘いじゃれあいであることを、彼女はよく理解していた。
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